ぎんたま

□外でご飯を食べよう
1ページ/2ページ








※家族的な万事屋
※沖→神要素あり






夕方。万事屋。
「ただいまヨー!」
遊びに出ていた神楽が、万事屋に帰ってきた。
ジャンプを腹に抱え、ソファで寝ていた銀時は、どたばたと廊下が鳴る音で目を覚ました。
鼻をほじり尻をかく。うるさいのが帰ってきた。
「おかえり神楽ちゃん。アレ買ってきてくれた?」
洗濯物を取り込んでいた新八が、奥の部屋から出てきた。
割烹着を着て、ますます所帯じみてきた。剣を極めるより、こっちを極めるほうが向いてるんじゃないかと銀時はこっそり思うが言わない。
「おう! あれアルな。はいヨ」
神楽はポケットを探り、新八に黄色い長方形の箱を渡した。ラップである。
箱はちょうど半分のところですっぱり斬れていた。
新八は絶句したように、口元をひきつらせた。
「……なにこれ」
「どSヤローが斬ったネ。わたし何もしてないヨ」
「なんで沖田さんが斬ることになったの」
「ヤツもこれ買いにきてたアル。けどひとつしかなくて、ヤツが斬ったアル。わたし何も悪くないヨ」
「……なんか沖田さんにしては譲歩してるね」
「ウン。今日は泣き落とし作戦したヨ。そしたらヤツ、顔真っ赤にしてぶふー!」
「……あはは、沖田さんかわいそー……」
げらげら笑いころげる神楽に、事情を察した新八はひきつり笑いを返した。
ソファの銀時も沖田に同情する。保護者として関係を認めるかどうかは別であるが、男として神楽の態度はあんまりだと思うのだ。女ってこわい。
ひいひい腹を抱えて、神楽は銀時の向かいのソファに転がった。
そして唐突に笑うのをやめ、むくりと起き上がった。
「腹へったアル。新八ィ、晩飯なにアルか」
洗濯物をたたみながら、食事当番の新八が答える。
「今日は煮っころがしだよ」
大げさに神楽が頭を抱えた。
「えーまたァ? わたしは転がされてばかりの女じゃないアル。たまには転がさないものも食いたいネ!」
「しょーがないでしょ。うちには転がすようなお金がないんだよ」
「お外で食いたいアル。今日ももちゃんちは鍋食べに行くんだって、いいなァ!」
「うちはうち、よそはよそだってなんべんも言ってるでしょ」
「ぶうう……」
新八のきっぱりした容赦ない宣言に、言い返せない神楽は、頬を膨らませまたソファに転がった。
そのままうつ伏せになり動かなくなる。すねているのだ。
その姿は子どもっぽく、可愛らしくもある。最近は顕著に現れる子どもっぽさだ。
ぼんやり神楽を眺めながら、ちょっと子どもっぽすぎるんじゃないか、と銀時は思う。
世間の女の子たちは恋だなんだと浮かれているが、神楽にはそういうのがあまりない。
このくらいのガキが恋だ愛だと騒ぐのはまだ早いと思うのだが、身近な子どもに同じような症状が現れないのも心配になる。気分はお節介な父親だ。
いやいやどSヤローにやるくらいなら、可愛い神楽ちゃんのままでいてくれて一向にかまわないが。
しかし神楽の行く末が心配である。うむう。
こういうのは人それぞれだし、首を突っ込むのは野暮だろうか。うーん。
「お外で食べたいヨ」
神楽がまたぽつりとつぶやいた。
すると銀時の頭に、あるひらめきがよぎった。





次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ