ぎんたま

□街の海の底
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※ちび神威とちび神楽
※過去捏造(本館:ホームスイートホームに登場した街が舞台)
※SF、ファンタジー要素たくさんあります


その電車には、神威しか乗っていませんでした。
がたがたと音がとてもうるさく、いまにもこわれそうな電車です。
明かりがついたりきえたりしました。だいだい色の明かりがともるランプで、ときおり、じじじ、と音が聞こえました。虫が中で燃えているのです。
明かりはうすぐらい灰色の床や壁、緑色の横に長いいすをてらしました。
てらしても、うすぼんやりと見えるだけです。明かりのないすみっこはくらいままでした。
神威はすみっこをじっと見つめました。たまに何か見えるのですが、今日は何もいませんでした。
窓の外では雨がふっていました。神威が電車に乗る前からずっとでした。
もうすぐ夜でした。なのであまり外はよく見えませんでした。
建物の明かりだけが、にじんで見えます。青や赤、緑に黄色に紫、絵の具に水をぶっかけたようです。
あっという間のはやわざで、明かりは神威の前を通りすぎていきました。
神威は大あくびをしました。いすの上に、あぐらをかいて座りなおしました。
電車がひときわ大きな音をたてて、駅にとまりました。神威がおりるのは次の次の駅です。
ぶしゅ、と音がして、開きにくそうに扉が開きました。
電車からは誰もおりません。ホームには誰もおりません。
青白い光が見えました。ホームはいつも病気のようです。
すみのまっくらなところに、何かいるような気がしました。かげが動いています。
びちゃびちゃと汚い音が聞こえました。屋根から水が落ちているのです。
しばらくして、また閉まりにくそうに扉が閉まりました。
そして、ひときわ大きくゆれて電車は走り出しました。
ゆれたことで、神威はいすにころがりました。緑のいすはあまり手ざわりがよくありません。神威の白い肌にかたい毛をさしました。
雨が電車を強くたたく音が聞こえます。神威は金属のたてる音がすきでした。
なんだか眠たくなってきました。
神威はもう一度大きくあくびをして、まぶたが言うままに、目を閉じました。





つづく







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