incident!!!
□incident!!!#08
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「「はぁはぁ…」」
ピンは全速力で走ったが、あやねも一緒にいるわけで、多少荒っぽかったがあやねの手を強引にひっぱりながら走っていた。
『incident!!!#08』
「とりあえず、ここ入るぞ」
あやねの方には向きもしなかったが、聞こえるようなボリュームで話しかけてドアを開ける。
―室楽音、と書かれたそこは、逆さまになった位置にある音楽室であった。
とりあえず、隠れることが一番だと判断したピンはあやねを無理矢理入れさせて自らがドアを閉めた。
「いった。…ちょっと、もう少しやさしくできないの?」
「は?やさしくしてんじゃねーか。」
といいながらピンはふーとため息をついて一旦座る。
それを見たあやねもピンにならって座った。
「…どこがよ。…手ぇ、すっごい痛いし。」
そう言いながら、先程ピンに引っ張られた手を大げさにさする。…実際無理に引っ張っていたせいもあって少し赤くなっていたので、痛くないわけはない。事実なのは間違いなかった。
「…でも、あめぇ、あんなに遅かったらおいつかれてたぜ?」
そういいながら、あやねの方は見ず呼吸を整えるピン。
――実際、ピンとあやねは一番やばかった。
すぐにあの女につけられてしまって、
ピンが必死になって引っ張っていなかったら――、考えるだけでも怖い。
それはあやねだってよくわかってはいた。
だが、文句をいいたくなるくらい、赤く痕がついているのだ。
「はぁ…もういい。とりあえず、落ち着いたら早く集合場所に行こう。」
あきれたという顔をしながら、ピンにそれだけ言うとあやねは目線を下に落とす。
(…まぁ、必死になってくれたのありがたかったけど。)
でも、そんなこと今言ったら馬鹿みたいなこと言うだろうから、言わないケド。
そう思いながら自分も今までの緊張を少しだけ解く。
だが。
『カタン。』
何故か
ドアの向こう側から、
小さな物音が急にした――。