marvelous!!
□marvelous!!#09
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―――バタン。
爽子は自室のドアを閉め部屋の中へと入っていく。
お風呂上りである爽子の髪の毛は水分を含んでいる。それもあって先ほどからずっと髪の毛を乾かそうとタオルで拭いていた。
(あぁ、もう、明日…なんだよね…)
ふと目についたカレンダーを見て、そのことに気が付く。
そう、
明日こそ、
爽子が初めて進む
本選の日となったのだ。
『marvelous!!!#09』
爽子は明日になってしまった本選のことが自分のとこなのにも関わらず、なんだかまだ実感が沸いてこなかった。
(この2週間、いっぱい弾いたなぁ。)
カレンダーをぽうっと見ながらこの2週間のことを思い出すものの、いつもの練習の倍練習したことくらいしか思い浮かばなかい。
強いて言うならそれくらいしか出来なかった。
それほど、あっという間、だったのだろう。
じっと見つめても、もう、本選は明日だ。
それは変わることのない現実。
それでも、なんだか自分の気持ちが不安定なような気がして仕方なかった。
(もう、やるだけ、やったと、思う…。)
―――思う、ケド。
ふう、と無意識にため息をつく爽子は少しうつむいて考えてみる。
これまでやってきたことは、
ほんとうに、
じぶんのせいいっぱい、
だったのだろうか、と。
(駄目だなぁ…こんな考え方しか今は出来ないなんて…。)
うつむいていた顔をまた上に上げると今度はカレンダーの明日の日付をそっと指でなぞる。
(…そうだ、楽譜…。もう一回みてから、寝ようかな。)
爽子はカレンダーからそっと手を離して机の上にある楽譜に手をかけた。
パラパラと自分が弾く部分のページをめくり、そのまま椅子へもたれかける。
楽譜に集中して見ようとした、そのときだった。
―――ブーブー……
携帯のバイブが突然部屋に鳴り響いてきた。
(あれ?誰だろ…。)
そう思いながら爽子は自分の携帯を取り出して開けてみる。すると、そこには何件か送られてきていたメールが複数あったことに今更気が付いた。
わわっ、と爽子は慌てふためきながらメールボックスを開くと、いつも仲良くしてくれている親友からのメールだとわかる。
「ちづちゃん…あやねちゃん…」
2人のメールを読むと明日のことを応援するメールの内容が書かれていて、それは本当に爽子が嬉しくなるような言葉が一杯詰まっていた。
そこには『頑張れ』なんて言葉はなくて、『楽しみにしてる』と書かれていて、それはきっと爽子はもう頑張っているのをわかっている言葉だった。
(こんな風に応援してくれる友達がいて、私、本当に嬉しい…。)
爽子は2人のメールをもう一度、じっくり読んで幸せを噛み締める。
そして自分らしく弾くことだけ考えたい、とメールを送った。
(うん…精一杯、やってみよう。)
――たとえどんな結果になったって、それでも今の自分には本当にいい経験になるのは違いないのだから。
そう思わせてくれる人たちに『いい演奏だったよ』と言われたいから。
そんな思いを胸に秘めて爽子は再び楽譜を見始めた。