incident!!!
□incident!!!#08
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(…なに、今の。)
あやねはさっきの物音に一瞬肩をすくめてドアの方に視線をむける。
すると、あやねに『そこにいろ』といったようなジェスチャーをしてピンがそっとドアの方に近づいていく。
(あ!そんなに近くにいって!)
その行動はあやねを不安にさせるものでしかなかった。
ただでさえ、相手が誰なのか、何の目的であんなことを言ったのか、全く検討がつかない相手だ。
それなのに、
ピンは至近距離で真っ向勝負しようとしている。
まぁ、もしかしたら、はぐれてしまった風早たちかもしれないが。
だが、その確立だって決して高いわけではない。
―何が起こるのかわからないのに。
そう思いながらあやねは辺りを見渡す。
(何か、武器になるもの…)
とりあえず探してみるものの、ここは音楽室、まともに戦えるようなものが揃っているわけがない。せめて椅子でガードするくらいだ。
だが、危ないといえば危ないのも事実。
ここは一番端のほうにある教室でもあるのでドアが自分たちが入ってきたところしかないのだ。
開けたときに、あいつだったら、…おしまいというのが目に見えている。
ここでしょうがないからピンがなんらかの行動をとった後、突破する以外の道はない。
(しょーがない、か。)
あやねは決心したかのように
自分もピンのようにドアの方に近づく。
「お、おまっ…!」
「しっ!声でかい!」
「いいから下がってろ!」
「いやよ。」
「は!?いみわかんねーよ!」
「そっちこそ、何カッコつけてんのよ。」
「…別につけてねーし!」
「…いいの。」
「あ?」
「別に、私は覚悟できてる。」
「……」
「あんただけカッコつけさせない。」
「…はぁ。…勝手にしろ。」
「そうするわ。」
それだけ言うと互いはドアの方に影があるか少しだけ覗いてみる。
だが、
「あれ…?」
「…誰もいない…か?」
ドアの曇りガラスには何も映っていないようだった。
それを見て2人は安堵する。
「なんだ。さっきの空耳?」
「なのかもな。だけど、違うかもしんねーし。」
とりあえず、出るとき気をつけないと―、
ピンがそう言って振り返った瞬間、
「―――何を気を付けるの?」
背後に見知らぬ女が立っていたのであった。