Sweet Dream

□異端の悪魔
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深夜のスラム街。

とても真っ当な人生を歩んでいるとは言えないごろつき共の溜まり場所として知られているこの街に、1匹の悪魔が流れ着いた。

先ず最初に思ったのは、とにかく治安が悪いことだった。
便利屋…別名殺し屋、闇の売人、マフィア組織、そんな人間たちの闊歩する街。
悪魔にとっては大いに結構だが…そんな恰好の場所のわりに自分以外の悪魔の姿が見られないことが不思議だった。
だがのほほんとしたこの悪魔は気にした様子はなく、獲物を求めて酒屋の賑やかな声を頼りに歩き出す。
この悪魔にとってふらりと寄ったその場所で食事さえ出来れば他はどうでも良いのだ。
悪魔は人や悪魔の血を糧にして生きる、異端の悪魔だった。
必要とあらば同属の悪魔も狩るが、獲物は弱いほうが都合が良い。
ここは血の気の多い人間たちばかりで悪魔は少ない。
ライバルが居なければ縄張り争いも無い。
悪魔は大いにこの街を気に入り、しばらく滞在しようかと思っていたその時だった。

「Hey…lady?」

突然背後から声をかけられて振り向けば、真っ赤なコートの男がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
顔が人間の視力でもわかるくらいの距離まで近づいて立ち止まる。
男は悪魔が見てきた人間たちの中でも際立った容貌をしていた。
まだ若く、美しい銀髪にアイスブルーの瞳。
鍛え抜かれた体躯。
悪魔も思わぬ獲物に出会えた喜びに嬉しそうに笑う。
美味しそうなのだ。
あの男も裏家業を営む者だろうか?
手には大きな二丁銃を握っている。
あれなら少しくらい多めに取っても大丈夫そうだ。
「俺のいる街を堂々と歩ける奴がまだいたとはな。」
男は冷笑を浮かべて言った。


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