Sweet Dream

□拾い物の正体
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朝、目を覚まして視界に飛び込んで来たのは濃紺の壁だった。
「?」
目線を上げると壁ではなく、紺色の無地のパジャマを着た銀髪の男が寝ている。
「あ…っ。」
髪が下りていて一瞬悪魔狩りの男を思い出して怯んだが、最後の記憶を辿って違うと悟る。
よく似た男なのだ。
自分は裸に同じ色のぶかぶかのパジャマを着ている。
腹部と足を見れば手当てをされていて、包帯が巻かれていた。
毛布を退けて起き上がろうとするが、身体のだるさと傷の痛みに突っ伏してしまう。
「…じっとしていろ。4発も撃たれていたのだからな。」
いつの間にか起きていたらしい。
「あと少し遅かったら助からなかったかもしれん。悪いが服は勝手に処分させてもらった。お前は…。」
関わっただけに、男も聞きたいことが山ほどあっただろうが、途中で口を噤む。
その状態から何か別のことを想像したのかもしれない。
身を引かれてひんやりとした肌寒い空気を感じ、冷気から守られていた事に気づく。
傷は昨日よりは良くなっていて、普通に撃たれたものと同じレベルになっていた。
撃たれたばかりの時はあの赤い男の魔力が傷口を抉るように痛め続けていたのだ。
傷が塞がらないのは辛いが、あの痛みを味わうよりは良いと言える。
そんなことよりも、先ずは言わなければと顔を上げる。
「あの…助けてくれてありがとう…。」
じっと見ると、この男は本当にあの悪魔狩人にそっくりだ。
こうして髪が下りていると瓜二つ。
だがサリタは一見見分けがつかない2人の違いをすぐに見抜いた。
輪郭が目の前に居る男のほうがほんの僅かに細いのだ。
まさか兄弟…?
いや、兄弟なら自分が悪魔であることに気づくはずだ。
あの男はただの人間ではない。
この人も人間じゃない気がする。勘だった。
しかしこれだけ似ているとなると血縁以外有り得ない。
もしかすると自分の魔力が減少し過ぎて悪魔の気配がしないだけかもしれない。
ならば、魔力が回復する前に人気の無い場所へ身を隠すべきだろう。
早く逃げなきゃ。
サリタは考えた。
「お世話になりました…。」
「待て。その身体でどこへ行くつもりだ?」
身体を起こした彼の首筋を見た途端、ぐ〜きょろ〜…と場違いな腹の音が鳴った。
「………。」
「………。」
妙な沈黙の後。
「…名は?」
「…サリタ。」
恩人ということもあり、素直に本当の名前を告げてしまった。

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