Sweet Dream

□悪魔と踊る [長編]
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依頼人から招待状を受け、いよいよパーティーに出席する…いや、狩りに行く当日。
数日前、ちょっとした慰謝料代わりに強奪したアーカムの黒塗りの高級車を玄関前に停めたまま、2人の半魔は即席のメイクアップアーティストとスタイリストに変身していた。
ダンテはサリタの薄い水色の髪が映えるよう、白いドレスを選んだ。
ダンテお手製のパットで、胸元はきれいな谷間が出来上がっている。
所謂ニセ胸だ。
ダンテはその出来栄えに酔い、頷いた。
ヒールが履けないことと、もしもの転倒を考慮し、裾がギリギリ隠れる丈にしてみたのが正解だった。
デパート巡りをしたものの、目に適うものが見つからず、結局フルオーダーで仕上げてしまった。
ギリギリにバージルが乱入して袖に金の刺繍を入れたり、仕立て屋を文字通り泣かせ、店にとってはかつて無い程注文の多い客だっただろう。
最初から最後までが嵐だったに違いない。
それで中身がブーツだなんてここだけの秘密だ。
バッグは何も入ってないが、お飾り程度に銀のスパンコールのものを持たせる。
中にはあめ玉でも詰めておこう。
どうせパーティーには使わない。
その全てはこの日のために用意したものだ。
次はバージルの出番だ。
サリタの白い顔に薄くパウダーファンデーションを叩いていく。
愛らしく魅せるチークも忘れない。
自分たちはともかく、女であるサリタはパーティーに出席するのに相応しい姿に仕立て上げなければならない。
やはり髪色を考慮してアイシャドーは無難にブラウン系、口紅も派手なものでは浮いてしまうため、ベースに薄いピンク色の後グロスで艶を出すまでに止める。
本当は何も付け加えたく無いが、パーティーにノーメイクは失礼に当たるからだ。
髪は元の素材が良いので小細工はせず、毛先を大きめなカーラーで遊ばせた。
これで完全と思いきや、指先を飾り忘れたことに気づき、軽く磨いてシャンパン色とホワイトでグラデーションを作った。
普段から悪魔らしく尖って伸びる爪をカッティングしておいて良かった。
バージルは一息つく。
「…これで大丈夫か?」
それは予想以上に魅力的に仕上がっていた。
サリタはかつて無いほど着飾られている。
「イイ!これならどんな城でも歩けるな!」
2人は知らぬうちに、目立つなという特約とはかけ離れた行動をしていた。
「どうだ?」
「…わ〜っ!すごい!」
サリタは着飾られた自分の変身した姿を見て、嬉しいような照れくさいような、頬を染めて目元を潤ませる。
「えへっ…。バージル、ダンテ、ありがとう!これ…好き。」
「………っ。」
「ヤバいな…。」
そんなでかい黒い目とツヤツヤした唇を向けるな。
良くも悪くもそれは可愛い過ぎた。
とても血を吸う悪魔になんて見えない。
「あんたのセンス、悪くない。」
「貴様もな。」
珍しく互いに讃え合ってしまうほど。
人間には有り得ないかもしれない純粋な黒色の瞳に、今は悪魔より淑女を感じる。
「サリタ…。」
「…ダンテ。」
吸い寄せられるダンテに、バージルが睨みつける。
せっかくのグロスを落とそうとする行為をしようとしたからだ。
「…わかってるって。今日は楽しいパーティーが待ってるからな。行こうぜ!」
ダンテは地図を持って車の運転席に乗り込み、ハードロックのミュージックを流す。
バージルが後部座席のドアを開けてやり、サリタが乗り込むと、続いて車に乗り込んだ。





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