Sweet Dream

□悪魔と踊る [長編]
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スラム街を出て2時間。
カイーナ(Caina)という町に着くと、自分たちの住む荒れ果てた町とは違い、一般人も裕福な暮らしぶりだとわかる町並みが見えて来た。
家同士の結びつきも良いのか、あちこちの建物がアーチ状に繋がっている。
ダンテは招待状と一緒に送られてきた地図を見ながら、指定の場所に車を走らせた。
町中を抜けると、指定された場所は森の入口だった。
そこには馬車が止まっている。
「おい、誰かいるな…。」
不信に思ったバージルが言った。
正装をした初老の男が恭しくお辞儀をしている。
「どういうことだ?」
「知らねえよ。」
とりあえず車を止めて出て行くと、男は言った。
「お待ち申しておりました。私はスレイマン伯の執事のレイブンと申します。主からお迎えに上がるよう命じられました。」
スレイマンというのは、今回の依頼人の名前だ。
指定された場所は迎えの場所だったらしい。
「へぇ…。」
一見丁寧にもてなしているようだが、本当のところはどんな乗り物で来るか信用ならなかったのだろう。
貴族のパーティーだ。
便利屋というだけに、もしもボロボロのジープで乗り込んだりしたら、その時点でアウトなのだ。
今回は余程信用されていなかったらしい。
打ち合わせ場所が場所だったから仕方ないとも言える。
バージルもそのことが読み取れ、不快そうな顔をする。
取り上げたものとはいえ、それなりの物で来たからだ。
「…失礼ですが、本日ご招待させていただいたのは2名様のはずでは…?」
遠慮がちに、だが同じ顔の2人を困惑しながら交互に見比べる執事。
そう言われるのは勿論予想していた。
「数は多い方が心強いだろう?仕事も捗る。」
バージルは強引に話を進めた。
「作用で御座いますか…。」
執事は直接旦那様に確認致しましょう、と3人を馬車へ促した。
「…馬車かぁ、揺れるんだよな〜。」
乗り込む前にダンテは呟いた。
「なぁ、サリタの力でパッと飛んでいけないのか?」
「私の力?」
バージルも興味津々だ。
「そんな便利な力があるなら使え。」
「なんと、そんな神力が…!?」
執事が驚く中、サリタは首を横に振った。
「今は無理…。」
突き出した手の平からは、プスンプスンと不発に終わる音がした。
それをやるにはエネルギー不足なのだ。
ダンテとバージルは力が抜けてしまう。
これから悪魔狩りに行くというのに、大丈夫なのか?
前途多難だ。
「早く乗ろうぜ。」
「…そうだな。サリタも充電せねば。」
「うぅ…っ。」
サリタはカァーッと赤くなって俯く。
馬鹿にされたようで悔しいからだ。


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