Sweet Dream V

□売れっ子作家 〜新たな挑戦〜
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レディのデビルハンター事務所の一室では、スラムの女性たちに支持される売れっ子同人作家がいた。
今や知らぬ者はいないほど有名な双子をモデルに、卓越したタッチで熱く描く大型新人である。
普段近寄り難い兄ファンには情報誌替わりになっているくらいに正確な情報が乗っている。(最寄の図書館、コーヒーの好み等)
パパラッチ特集のようだ。
全く関係ないスーパーのチラシに短編で兄弟のBLを載せてから巷で流行らせてしまった作家は、一度モデルの兄に半殺しに遭っている。
作家・アーカムはジェスターというPN(バレバレ)で数々のヒットを叩き上げていた。

そんなある日の出来事。

「アーカム。」
実の娘であるレディは、テメンニグルでの一件からアーカムを一体の悪魔として見ることに決めていた。
アーカムは振り向かない。
「…今トーン貼りの最中だ。後にしてくれないか?」
「また描いてるの?」
レディは描き上げられたページの一枚を手に取る。
物語はダンテがボビーの穴蔵で一服盛られ、同業者に襲われそうになるところをバージルが助け出し、そのままなだれ込むところだった。
「…実物そっくりね。まるで目の前で見ているような出来栄えよ。」
それは身震いするほど素晴らしい画力だった。
レディは最近モデルの双子を見ると、同情したいような複雑な気持ちになったり笑い出しそうになったりで大変だ。
先日リクエストに応えて"ダンバジ"なるものを出したら、バージルに見つかり書斎を破壊されてしまったことがある。
本気で怯えて泣くアーカムを見て、だったら描かなければ良いのにと思う。
それでも死と隣り合わせに本を創り続ける精神はあっぱれとしか言いようがない。
実は何だかんだ言ってレディは密かに愛読している。
現実に反発し合っている2人がドラマチックに恋愛しているのが面白いからだ。
そういえば、最近2人の事務所に同居している少女のことをこの男は知っているのだろうか?
レディは思った。
「最近ダンテたちの事務所に女の子が住んでるの知ってる?」
「…何だって?」
アーカムの手が止まる。
レディは意外そうな顔をする。
「女の子よ。本当に知らないの?バージルが連れて来てから2人で取り合ってるのよ。」
「知らない!!」
アーカムはガタンと音をたてて立ち上がり、インクをこぼした。
「そんなのジェスター初耳ーッ!!!!!!」
アーカムは道化の姿になり、重力逆転天井からぶら下がってカルチャーショックを受けている。ムンクみたいだ。
「あのバージルが女!!!」
「変な言い方しないでよ。バージルは女の子に興味津々なの。ダンテもね。」
「そんなのジェスター絶対認めないよー!!!年は!?タイプは!!?」
「16歳くらいの女の子だったわよ!といっても悪魔だから何歳かわからないけど。」
「…………!!!」
ジェスターは驚き硬まりながら遠くを見つめる。
「堅物兄…少女…小悪魔少女…節操無し…弟…ライバル…三角関係…。」
「ちょっと、大丈夫なの?」
ブツブツと宇宙と交信するかのように呟くジェスターに、レディは後退りする。怪しすぎるからだ。
「キターーーーーーーーーーーッ!!!!!!半魔双子×小悪魔少女萌え!!!トライアングル萌ェェーーーーーッ!!!!!」
ステッキを振り回して絶叫するジェスターに、レディは終止符を打つ為カリーナ=アンをロックオンした。




END

 

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