* text
□休息
1ページ/2ページ
club indigoの開店時間まで、あと半日というお昼すぎ。
憂夜は、事務所のドアの前に立っていた。
軽くノックをし、いつものように声をかける。
「憂夜です。おはようございます、店長。開けてもよろしいですか」
憂夜はしばらく待った。
しかし、一向に返事はない。
再びノックをし、先ほどより大きめに声をだす。
「店長? 憂夜ですが」
しかしやはり返事はない。
留守かとも思ったが、憂夜が来る時間に事務所にいないときは連絡がきているから、出かけたとは思えなかった。
眉をひそめ、何かあったのではと、憂夜は少し焦った。
「店長、失礼します」
ドアをあけると、そこにはやはり晶の姿はなかったが、変わりに荒い息遣いが聞こえてきた。
憂夜は、晶の私室スペースの境になっているカーテンまでそっと近づく。
「…店長」
小さく声をかけてみるが、晶の目が覚めた気配がない。
どうやら具合が悪いらしいということはわかるが、様子を見ないことにはどうしようもない。
「店長、開けますよ」
憂夜はカーテンを開けた。
そこには赤い顔で苦しそうに寝ている晶の姿があった。
「具合が悪いなら、すぐに呼んでくださればいいのに…」
小さなため息をつき、憂夜は晶の汗に濡れた額に手を伸ばした。
少しためらったあと、額にその大きな手のひらを乗せる。
「熱いな…」
思ったよりも熱が高そうで、憂夜は顔をしかめた。
すると、
「…憂夜さん…?」
晶がうっすらと目を開けた。
「店長、起こしてすみません。ですが何か召し上がって薬を飲まないと。」
そう言ったものの、晶はまだぼんやりしている。
「手……」
「手?」
「憂夜さんの手、冷たくて気持ちいい…」
そしてまた、うとうとと眠りに落ちていく。
憂夜は苦笑しながらも、しばらく晶の額に手を乗せていたが、看病するために必要なものを揃えるために、晶が寝入ったところで事務所をあとにした。