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□守りびと
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新宿のホストクラブ・エルドラドには様々な情報が集まる。
それこそたわいもない噂話から、密談めいた話までざまざまで、ついつい頼ってしまうのだ。
今回またしても空也に有益な情報を提供してもらい、今日は報告と礼を兼ねて少し飲んでいくことにした。
なぎさママも誘ったのだが、どうしても断れない用事があって一緒にはきてもらえなかった。
「高原様、ご来店いただきありがとうございます。今日もお美しいですね」
でた、エセフランス人。
晶は心の中で突っ込んだ。
「相変わらずよね、それ。ほんと歯が浮きそう」
「心外ですね。心からそう思っていますが?」
「はいはい、ありがと」
空也のこんな言動にもだんだん慣れてきて、今では軽くあしらうまでになった。
空也は、そんな晶の様子にひそかに苦笑する。
ひとしきり飲んだあと、長居するつもりのなかった晶は時計を見て腰を上げた。
「あ、もうこんな時間。帰るわ」
エルドラドの階段を上がって、外へでる。
少し飲みすぎたのか、少々足元がおぼつかない。
昔はこれぐらいで酔わなかったのに…やっぱりトシかしら、と自分でも嫌なことを思った。