* text
□コーヒータイム
1ページ/3ページ
「あ、美味しい」
買い物帰りに寄った喫茶店のコーヒーがおいしくて、思わずひとこと。
たまにこの濃い苦味が恋しくなる。
店に帰れば、憂夜さんがハーブティーを入れてくれる。
もちろんコーヒーだって淹れられる。
要するに、あたしにもひとりでひと息つきたい時があるってこと。
たまには。
ひとりで。
って思ったのに。
「こんにちは高原さん」
……思ってたのに…
「表からあなたの姿が見えたので」
現れたのは新宿歌舞伎町・王道ホストクラブ、エルドラドのNo.1ホスト、空也。
「ご一緒してもいいですか?」
「あぁ…うんまぁ…」
歯切れの悪い曖昧な答えを返したのに、空也はにこにことあいている前の椅子に座った。
「今日はどちらか行かれていたんですか?」
「うん、ちょっと」
今日の空也は同伴出勤前なのか、店にいるのと変わらない出で立ちだ。
相変わらずキラキラオーラを振りまいている。
「これから同伴?」
「えぇまあ」
「なんか、あたしが同伴相手みたいで周りの視線が痛いんだけど…」
居心地の悪いあたしに、空也はクスリと笑ってみせた。
これだけまさにホスト!な格好をしていて、かつこの容姿だ。
目立つことこの上ない。