乙女ゲーム短編
□Let's party!
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さてさてこれは冬なら定番の鍋の話。
全員が成人してからというもの、毎年恒例となっている鍋パーティー。けれど、今年は少し違った。
例年と違い、北海道に行ってる土方さんがカニを二キロ送ってくれたんだよキャッホイ!
い、行かねば……!これは這ってでも行かねば……!
というわけで、カニに誘惑された男女がまた集うことになったわけです。つっても、女はあたし一人だけど。(千鶴は土方さんについて行きました!)
会場はいつもと同じ左之さんが住んでいるマンション。
そんであたしは最寄り駅に着き、会場のマンションを目指して歩き始めた……が。
行けども行けども目的の建物が見えてこない。こ、これはもしや……。
自分の失態に気づき、あたしは携帯で左之さんに電話をかけた。
「あ、左之さん?今ねぇ、ファミマの前なんだけど……」
「分かった落ち着け。とりあえず駅まで戻れ。つか咲妃、お前ここ来るの何度目だ」
呆れた声が電話越しに聞こえてきて、何だかとてもいたたまれない気持ちになった。
こうして迷子のあたしは、左之さんナビにより無事到着。チャイムを押してから部屋に入った。
そこには左之さんと新八っつぁんの二人。あたしは三人目だった。残りの総司、一君、平助の三人は少し遅れるとの連絡があった。
ところが部屋は既に、鍋の匂いが充満していた……!
「何でもう始めてんの!?過半数が集まるまで待とうよ!!
はっ!そういえば左之さんナビが途中で何度か途切れてたけど……食ってたのか……!
呆れと怒りがメンチ切り合ってるあたしも、新八っつぁんに早く座って食えよー、と言われれば素直に従うしかない。だってカニが無くなる。いや、実際もう具が少ない。オマケに空になったビールやら酎ハイやらがその辺に転がっていた。
「何か、食べるもの少なくない?」
「だな〜。買い込む量間違えたか?」
違うよ。二人が食べちゃったんだよ。
――Prrrrrr……
丁度その時、左之さんの携帯にメールの着信。(平助)駅前にいるからもうすぐ着くぜ!とのこと。
それを確認するやいなや、すかさず左之さんが平助に電話をかけた。
「平助、もう具がねぇから駅前のスーパーで椎茸と春雨と白菜と豆腐と……他になんか美味そうなものあったら六人分買ってきてくれ」
「あと酒もなー」
「ちょっと、酒は重いんじゃない?」
いくら相手が平助だからって、扱いが酷すぎる。
「大丈夫だって!平助ガッツあるしよ!」
「というわけでよろしくなー。あ、酒は缶な。じゃ、待ってるぞー」
一方的な注文を終え、電話は切られた。切れる寸前、電話の向こうから平助の叫び声が聞こえた気がした。手伝いに行こうかと思ったが、悪いけど今は彼氏よりカニだ。早速カニを――カニが……カニが見当たらない!?
「あの、カニ様はどちらに?冷蔵庫?まさか……二人の胃の中!?」
「心配すんなって、ちゃんと置いてあっからよ」
左之さんの言葉にホッとしたのもつかの間。言いながら左之さんは何故かカーテンの隙間に手を突っ込んだ。そしてその手に握られていたのは――立派なカニの足。
「何でそんな所からカニが出てくんの!?」
「昨日からベランダに出して解凍してたんだよ。だって二キロだぜ?他にも材料あんのに冷蔵庫になんて入らねぇよ。それに冬場だし、天然の冷蔵庫ってことで」
「でも今朝雨降ってたよね!?つまりそのカニは風雨にさらされ「大丈夫!」
押し切られた!?……まぁ細かいことは気にしたら負けだから諦めよう……。
そんでしばし三人でカニをむさぼった。何気左之さんがカニ剥くの上手かった。
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