零式長編

□伍
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「よぉ、セブン」

第六武器研究所に来ると、見知った顔を見つけたので声をかける。

「アルか。どうした?こんなところで」

「ん?俺は愛刀ちゃんのメンテ。この前の戦いでデッカいヒビが入っちまってさ」

タハハ……と頭をかきながら笑うと、コンコンと大剣を叩いた。

「セブンはウィップの刃こぼれ直したか?」

「あぁ、問題ない。万全だよ。……ん?」

「ん?どした?」

急に彼女の様子が変わったので、不思議に思い尋ねる。

「いや、何だか視線を感じて……」

「視線?……あ、あの子じゃねぇ?」

「?」

アルが後ろを指差したので、振り向いてみた。

――そこには、ブカブカの制服を着て、ボサボサの髪をポニーテールにした少女が立っていた。その身体に合わない一際大きな鞄も目を引く。



「……誰だ?マントの色から見ると、12組だろうが」

「あー、あの変人クラスか。そんな子が何で……――あれ?近付いてきたぞ」

二人が小声で話していると、その少女はズンズンと此方に近付いて来る。

そして二人の前でピタリと足を止め、ジーッと見つめてきた。

「何か、用か?」

セブンが少し戸惑いながらそう尋ねると、その少女はキッとセブンを睨みつける。

「ボクをイジメに来たんだな!?そうだろ!?」

少女はセブンを指差して(袖で隠れて実際は見えないが)、そう言い放った。当然二人は目を丸くして驚く。そして顔を見合わせてから少女を見た。

「えっと……俺も、彼女も……君とは話したことも無いはずなんだけど?」

「ボクの目が、いいや存在が気に食わなかったんだ!だからボクをイジメるんだ!」

しかし少女は聞く耳を持たず、大きな声で喚く。

アルがどうしたら良いか分からず苦笑を浮かべていると、はぁ、とセブンがため息をついた。

「おい、あまり大声で騒ぐな。周りに迷惑――」

わぁぁぁぁっ!

セブンの言葉を遮り、少女は頭を抱えながら叫んだ。

「っ!?」

「い゙っ!?」

今までで一番のビッグボイスに驚き、二人はビクッと肩を震わせる。

「今、騒ぐなって言ったな!?ボクにしゃべるな、息するなって言ったな!?」

「いや、飛躍し過ぎだって。頼むから少し静かに――」

「イジメに来たんじゃなくてボクをやっつけに来たんだな!?」

「聞いてくれよ人の話をよ」

全く聞く耳を持たない少女にさすがのアルも嫌気がさしてきたのか、深くため息をついた。

「はぁ……ってオイ!!」

ガシガシと頭をかいてもう一度少女を見ると、アルは驚きの声を上げた。何故なら――



「ボクの爆弾で木端微塵にしてやるー!!」

少女が鞄から大きな爆弾を取り出し、構えていたからだ。大きさから考えて、少なく見積もってもこのフロアは軽く吹っ飛ぶ。何としてでも止めなければならない。

「少し落ち着け!そんなものを爆発させるなんて危険だ!」

「そうだぞ!てか俺達だけじゃなくて君を含めた全員が木端微塵になる!頼むからそのブツをしまってくれ!」

だがやはり少女は人の話を聞かず、爆破スイッチと思われる赤いスイッチに手を伸ばし――



「くそっ――!!」

アルはとっさにセブンの手を引いて彼女を抱きしめ、少女に背を向けた。










――が、何も起こらない。



「あ、コレまだ完成してなかったんだ……。くっそー!覚えてろー!!」

「…………は?」

アルの口から間抜けな声が洩れたかと思うと、いつの間にか少女はいなくなっていた。

「何だったんだ?一体……。…………おっと、悪い」

唖然としていたが、セブンを抱きしめたままだったことに気づき、謝ってから彼女の身体を離す。

「悪ぃ悪ぃ、殆ど反射だったわ。…………セブン?」

あっはっはと笑いながらセブンの肩を叩くが、彼女は全く反応しない。というか、固まっているようだった。

「もしもーし、セブンさーん?俺の声聞こえてるー?」

「…………///」

セブンは、胸の前に軽く握った拳を持ってきて顔を赤らめるという何とも乙女チックかつ可愛らしいポーズで固まっている。つまり……前のデュースと同じ状態だ。



結局セブンが復活したのは、暫くたってからのことだった。




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