緋色の欠片長編

□序章
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昔々あるところに、リュウノツガイオオミカミという女の神様がいました。



リュウノツガイオオミカミには、玉依姫命というとても仲の良い友達がいました。二人はいつも一緒でした。



ある日、玉依姫命の前に男の神が現れました。男の名は……常世神。



玉依姫命は、常世神に恋をしました。そして、玉依姫命の気持ちを知った常世神は、彼女の気持ちを利用しました。彼は力が欲しかったのです。



それを知ったリュウノツガイオオミカミは、玉依姫命を説得しました。彼の本当の目的も伝えました。ですが……玉依姫命は、それでも常世神を愛し続けました。



リュウノツガイオオミカミは、直接常世神のところへ行きました。玉依姫命から手を引かせる為です。



それが聞き入れられない場合は、どんなに玉依姫命に恨まれようと、常世神を殺そうと思っていました。



ですが……彼女は見てしまったのです。常世神が涙を流し、一人泣いているところを。



彼女は初めて知りました。常世神は、怒りと、憎しみと、悲しみに捕らわれているだけなのだということを。



彼を止めたい。

怒りを鎮めてあげたい。

憎しみを無くしてあげたい。

悲しみを癒やしてあげたい。

ただ純粋にそう思いました。



そう、彼女は気づいたのです……自分が彼を愛していたことに……。



しかし……彼女が自分の気持ちに気づいた時には、もう全てが遅かったのです。



鬼斬丸の封印は解かれ、常世神は玉依姫命を殺してしまいました。



そして鬼斬丸は再び玉依姫命によって封印され、常世神は何度でも転生し、玉依姫命を守ると誓いました。



リュウノツガイオオミカミは、深く後悔します。



自分が常世神を愛さなければ、鬼斬丸の封印が解けることは無く、玉依姫命が死ぬことも無かった。――自分が彼を愛さなければ。



彼女は自分を責め、堅く誓います。



自分も何度でも転生し、玉依姫命を守ろう。そして、もう二度と同じ過ちを繰り返さない為に、『女』には決して転生しない――と。




 

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