緋色の欠片長編

□第六章
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次の日の昼休み。あたし達はいつものように屋上に集まり、昨日の事を話し合っていた。

「ねぇ、多分なんだけど、封印を襲った人達って、みんな同じグループに所属してるっていう感じがしない?」

珠紀の言う封印を襲った奴らの中には、勿論アインとツヴァイも入っている。しかし、他のみんなに話を聞くと、祐兄、卓兄、慎司の三人も、それぞれドライ、フィーアと名乗る人物と遭遇したそうだ。

「僕もそう思います。あんなにタイミング良く、複数の結界が襲われるなんて有り得ません」

「同感。それに……アイン、ツヴァイ、ドライ、フィーアはドイツ語で一、ニ、三、四って意味らしいし」

「……つまり、そいつらはやっぱり連んでる可能性が高いって事だな」

拓磨の答えにあたしは肯定の意を示して頷く。

「……で、本日はいかが致しますか?我らが玉依姫様?」

おどけたようにそう尋ねると、珠紀はにっこりと笑って拳を突き上げた。

「封印を調べに行こうと思います!」

「何だその単細胞っぽい計画は」

「た〜く〜ま〜くぅん?」

指をボキボキ鳴らしながらにっこりと微笑みかけると、何故か拓磨の顔色はサッと青くなり、口元をひくつかせる。



「お前さ」

ふと、弘兄が訝しげに珠紀を見て言った。

「怖い目にあったろ?まだそんな事続けるのか?後は俺達に任せるって気には、ならないのか?」

「……それは」

珠紀は口を噤んで俯いたが、すぐに顔を上げる。

「私でも、役に立てたって思えたから。だから私も行くんだよ」

「お前な、言ってる意味分かってんのか?またあいつらに襲われたらどうするんだよ」

はぁ、と深くため息をついて拓磨がそう尋ねた。

「そしたら、あなた達に守ってもらう」

「……結局、他力本願じゃねぇか」

みんなが冷たい視線を注いでいるにも関わらず、珠紀は強い瞳のままだ。

「頭痛がどうとか言っていたな。もう大丈夫なのか?」

祐兄がそう尋ねると、珠紀はあたしの方に視線を向けた。

そしてあたしが頷くと、祐兄の方に視線を戻す。

「それも、私が封印の場所に行きたい理由の一つなんです」

どう考えたって、珠紀とあたしの頭痛は封印の異常を伝える警報装置のような物だ。あたしと珠紀は、封印と繋がった存在なんだと思う。まず間違い無く、玉依の血と関係している。

――そんな話をしていた時だ。



「……ん?誰か、いるな」

祐兄が不意にそう言って、昇降口の方を見つめ、あたし達もそれにつられるように、その方向に視線を向ける。

「……あなた達」

それと殆ど同時に、フィオナ先生が昇降口から現れた。

全員が驚いて彼女を見る。

「……こんなところで何をしてるの?もうすぐ授業、始まるわよ?」

「あ、あの、ごめんなさい!」

「いや、珠紀……何で謝ってんの?本気で怒ってるわけじゃないって」

わたわたとお弁当を片付けようとする珠紀を見てあたしがそう言うと、フィオナ先生はクスクスと上品に笑った。

「龍宮さんの言う通り。冗談よ、冗談」

「……あんたは、何でこんなとこにいるんだ?」

拓磨がいつもより少しだけ低い声でそう尋ねると、フィオナ先生はふわりと笑む。

「あら、ここは私も結構お気に入りの場所だったりするのよ。先生は来ちゃだめ、なんていう校則は無かったはずだけど」

拓磨は言い返せずに、うっと唸った。



……にしても。

「……先生、もしかして今の会話聞いてました?」

あたしがそう尋ねると、フィオナ先生は難しそうな顔をした。

「少しだけね。盗み聞きする気は無かったんだけど……」

ちょっと気まずそうに言って、それから。

「どこかに出かけるみたいな話だったけど、遅くならないようにするのよ。最近は物騒なんだから」

先生は屋上から出て行った。

「何だ、あいつ?」

「さぁ?てか拓磨、探り入れるならある程度言い返す言葉用意しときなよ」

あたしが小声でそう言うと、拓磨は再びうっと唸った。

「……セクシーだ。やっぱり美人はいい」

……この人は……。

「祐一先輩もそれでいいですか?今日は放課後、封印の場所に行こうって思ってるんですけど」

「あー無駄だよ珠紀。フィオナ先生と話してる間に寝ちゃったみたいだから」

珠紀は祐兄が寝ているのを確認すると、深くため息をついた。

「あ、あの!僕も頑張ってお役に立ちます!」

そう言った慎司は、いつもの数割増しで可愛く見えた。




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