GOD EATER2長編
□第五話
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「ブラッドというのは、君達か?」
任務を終えてギルと共にフライアのロビーへと戻ってくると、見慣れない人物に声をかけられる。
声をかけられたのに無視をするわけにもいかず、ギルとルナリアはその青年に向き直った。
……何というか、色々と派手な青年だ。
「そうですけど……何か?」
「フフ、緊張するのも無理はない……だが安心したまえ!この僕が来たからには、心配は完全に無用だッ!」
大振りに、オーバーにキメポーズを決めながら話す青年に、ルナリアは目を丸くする。
こういうタイプの人種に会ったことがないので、対処法が分からないのだ。
数秒の沈黙の後、青年は体制を立て直して背筋を伸ばした。
「おっと、失礼した……。僕はエミール……栄えある極東支部「第一部隊」所属!エミール・フォン・シュトラスブルクだッ!」
「は、はぁ……(シュトラスブルク……?何だか聞き覚えがあるような……)」
そうは思うが、大仰な身振りと共に自己紹介をする青年に戸惑い、上手く記憶の糸が辿れない。
「……そうか、よろしくな」
ギルは一応そう返すが、明らかに表情が「何だコイツ」と語っている。
そんなギルの表情に苦笑を浮かべながら、ルナリアは青年に視線を戻した。
「この「フライア」はいい船だね……実に趣味がいい……。しかし!この美しい船の、祝福すべき航海を妨げるかのように……怒涛のようなアラガミの大群が待ち受けているという……」
それは本当だ。そして、そのアラガミの大群にブラッドだけで対応するのは無謀ということで、最寄りの支部に応援を要請しているところだ、ということを出発前にジュリウスから聞いていた。
因みにブラッドは、ジュリウスは単騎、ロミオとナナのチーム、そしてルナリアとギルのチームの三チームで広範囲をカバーすることになっている。
目の前にいる青年――エミールも極東支部に所属していると言っていたし、その応援に応じて派遣されてきたのだろう。
「きっと……君達は不安に怯えているだろう……そう思うと僕は……僕は……いてもたってもいられなくなったんだッ!」
一人で語り、一人で盛り上がり、ギルとルナリアを置き去りにしてずいっと此方ににじり寄ってくる。
「えっと……それは……あ、ありがとうございます……」
横から「こんなヤツ放っておいて早く行こうぜ」と言わんばかりのギルの視線を感じながら、ルナリアは愛想笑いを貼り付けてそう答えた。
エミールは再び視線を正すと、その長い前髪をふわりとなびかせる。
「そういう訳で、君達には僕が同行するよ!まさに、大船に乗ったつもりでいてくれたまえ!」
「よ、よろしくお願いします、エミールさん……」
そうルナリアが言うと、エミールはカッと目を見開いた。今度は何だと言うのだろう?
「むッ!?さん付けなど不要!僕達は巨悪と共に戦う……言わば同士ッ!どうか対等に接してくれたまえッ!」
……ということらしい。
「う、うん……よろしくね、エミール。私はルナリア、こっちはギルだよ」
正直言って変わった人物だが、その言動から判断するに悪い人物ではないらしい。ルナリアは戸惑いながらも自分とギルを紹介し、右手を差し出した。
「よろしく頼む、ルナリア!そしてギルよッ!共に戦おうッ!人類の輝かしい未来の為にッ!!」
エミールはルナリアの手を取ると、上下に少々激しく振る(乱暴ではないのが不思議だ)。
行動や言動はいちいち大仰だが、きっと彼は「ゴッドイーター」という仕事に誇りを持っているのだろう。
「そ、そうだね」
「……あぁ」
「我々の勝利は、約束されているッ!」
そしてルナリアの手を離してそう言い放つと、片腕を突き上げて何故か此方に顔を向けたまま去っていく。
そんな彼に、ルナリアは愛想笑いを浮かべながらもしっかり手を振った。
「ね、ねぇ!ちゃんと前を向いて歩かないと「ぬわあああああッ!!?」アブナイヨ……」
彼女が注意を言い終わる前に、エミールはそのまま勢い良く階段から転がり落ちていった。
「うわぁ!?人が落ちてきた!?」
「あららら!?大丈夫ですか!?」
「くッ……こ、これしき……ッ!」
そんな会話が階段下から聞こえてくる。どうやら下にはロミオとナナがいたらしい。
「……ややこしいヤツが来たな」
「ま、まぁまぁ、応援に来てくれたんだし、歓迎しないと……」
今だ騒がしい階段下の方を見つめながら、ルナリアは苦笑を浮かべたのだった。
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