ハイキュー!!
□B
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自分がΩだと分かったその日、俺はすぐに病院に行った。
そして、認めたくないけどやっぱり俺はΩで……発情期の時期が安定するまでは、必ず常に抑制剤を持ち歩けと医者に言われた。いつどこで本格的な発情期を迎えるか分からないからだ。
悪いことは続くもので、病院に行ってから三日後にΩの症状が少しずつ出始めた。
安定するまでは、発情期中家でじっとしているかも、抑制剤で無理矢理押さえつけるかも選べない。
……まぁ何にせよ、俺は抑制剤を使うことを選ぶけどね。
一週間も家でじっとするなんて冗談じゃない。そんな行為、自分がΩだと公言しているようなものだ。
それに一週間も部活を休んだら、確実に身体が鈍る。それを取り戻す間にも、俺と「アイツら」の差は開いていく。
だから俺はΩに縛られたりしないし、絶対に負けたりしない。振り回されてたまるか。
−−と、意気込んではみたものの……不安がないわけがない。
まずΩの発情期。これは少なくとも一年は安定しない。しかもそれはかなり個人差があり、安定するまでに五年以上かかった人もいるらしい。
……正直、想像したくない。
「……ホント、いつまで続くんだろ……」
自分で口に出しておきながら、俺は苦笑を浮かべた。……そんなこと、分かり切っている。
確かに抑制剤を飲めば、フリーのαを無差別に引き寄せるフェロモンも、自分の発情も大分抑えられる。
まぁでもあくまで無理矢理抑え込んでるわけだから、薬のせいで眠気はスゴいし、吐き気もヒドいし、身体も気怠い。もっと副作用の少ない抑制剤もあるにはあるけど、それだと初期のうちは効き目に不安が残る。
いつまで続くんだろう?じゃない。これは俺が死ぬまで続くんだ。それが、Ωに生まれてしまった者の運命なんだから。
……でも、もし番ができたら……?
番ができれば、フリーのαを無差別に引き寄せるフェロモンは出なくなる。そうなれば、今より副作用の少ない抑制剤に変えられるだろう。
……でも、番は一生物の繋がり……早々簡単には選べないし、決められない。
「……深雪」
呟いてから、俺はハッと我に返る。
何言ってるんだ、深雪に迷惑をかけないようにΩだってことを隠してるのに、それじゃ何の意味もないじゃないか。
深雪は優しい女の子だ。俺が助けを求めれば、迷わずに手を差し伸べてくれるだろう。
番は一生物の繋がり……こんな子供のうちから、彼女を縛るわけにはいかない。
……でも、いつか深雪に番ができた時、俺は冷静でいられるのかな?
大切な深雪をとられるのに、俺はそのままでいられるのかな?笑って良かったねって、言えるのかな?
……正直、そんな自信は全然ない。
これは所謂「恋」なんだと思う。
他のどんな女の子よりも大切で、一緒にいたくて、笑っててほしくて、幸せになってほしくて……ずっとずっと、傍にいてほしいって思ってて。
だけど深雪は、きっと俺のことは単なる幼なじみとしか思ってない。
大事に思ってくれてるのは分かるけど、男としては見られてない。
そんな彼女の人生を、縛りたくなんかない。
……だけど。
「深雪……俺を……俺を、助けてよ……」
誰もいない部屋の中、そんな小さな叫びだけが虚しく響いた。
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