ハイキュー!!
□F
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「ったく、お前らはガキの頃から心配ばっかかけやがって……」
「「本当にご心配をお掛けしました……」」
部活開始十五分前。私と徹は、アップを始めた一を体育館の隅っこに呼んでから頭を下げた。
そして、ギクシャクしていた私達の関係が修復されたこと、何でこんな事態になっていたかということ、徹がΩだということ、私達が番になる約束をしたこと……大事なところを掻い摘まんで、全部話した。
予想通り一はスゴく驚いていたけど(当たり前)、すぐに徹の頭をガシガシとちょっと乱暴に撫でた。そのせいで徹は今にも泣きそうだ。
【お前が何であろうが俺は変わらない】
つまりはそういうことだろう。
こんな話を一気に聞かされたというのに、それら全てを受け入れてすぐにこっちに気を回す。岩泉一という人の懐の大きさと男気を、私は改めて実感した。
「まぁ、黙っていたことは褒められたことじゃねぇけどな。チームにも影響することだし」
「うっ……ゴメンナサイ、反省してます……」
「もう隠し事はねぇな?あったらぶっ飛ばす」
「ないよ!何ならバレーの神様に誓ってもいいよ!あとすぐにぶっ飛ばすとか言うのやめた方がいいと思うな!」
「うるせぇな!それに何だバレーの神様って!」
怒りながら徹の頭を掴もうとする一に、それを避けながら楽しそうに笑う徹。
……あ、何か私今スゴく幸せかも。
「……まぁ何にせよ、他の奴に何言われようが、俺は味方してやるから安心しとけ」
「さすが一!やっぱりカッコいいー!」
きゃーと奇声を上げながら抱きつこうとすると、素早いデコピンで撃墜された。痛い。
「いだい〜……!一の暴力男〜……!」
まぁ徹に比べたら、明らかに手加減してくれてるのは目に見えてるんだけどね。多分徹が同じ行動をとったら、確実にボディで沈められる。
「つーか深雪!お前は女子のコート戻れ!和麻がこっち睨んでるぞ!」
「おう?」
一が指さす方向を見ると、我らが男前ツンデレセッターが苛立ち顔でボールを構えていた。おっとマズい、これ以上だべってたらアレぶつけられる。
「んじゃあ私は戻るね!二人共集中して練習しなよ!そんで中総体絶対勝つよ!」
「言われなくても分かってんだよ!とっとと行け!」
「また後でね〜」
コートを指差して怒鳴る一とひらひらと手を振る徹に親指を突き出し、私は女子のコートへと走って向かった。
「……岩ちゃんさ、あんまり驚かなかったね」
深雪が向こうのコートに戻り、和麻の投げたボールを笑いながらキャッチしたのを見届けると、及川はポツリとそんな言葉を零した。
「何言ってんだ、普通に驚いたっつの。……まぁ、納得の方が強かったけどな」
俺達三人はガキの頃から一緒で、それこそしょうもない悪戯も揃って沢山してきた。親ですら知らない爆弾は大小問わずお互いにいくつか抱えているし、隠し事という概念が俺達にはあまりない。
特に及川の口からは「岩ちゃん、深雪、コレは誰にも言っちゃダメだよ?三人だけの秘密だよ?」といったセリフを何回も聞いてきた。こいつは俺と深雪には何でもペラペラと喋る。
そんなこいつが、俺にも深雪にも、苦手な筈の隠し事をしたんだ。事が小さい筈がない。
そして聞かされた時は驚いたが、やっぱり納得がいった。褒められたことじゃないが、隠すのは当然だと思った。俺だって、もし自分がΩだったら隠してる。
だがこいつは話した。だったら俺だって、それなりの誠意を見せるもんだろ。
「……まぁ、お前が何であれ、お前はお前だ。めんどくさくて鬱陶しくて、世話のやける俺の幼なじみだ。何も変わんねぇよ、これからも」
「……うん」
「だから……とっととその涙止めろ」
「うん……!」
背中をどつくと、及川はTシャツで涙を拭った。
あとがき→
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