短編

□声が届く範囲
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クラスで目立つことのない私。人が好きじゃなかった。


だから自ら遠ざけて一人になった。



「おはよ」


そう飛び交う声。誰も私に向けることはない・・・・。






「おはよっ!」



と一言私に声をかけてくれた。





思わず黙りこくった私に彼はにこやかに笑い、




「おはよーって返そうぜ?」



と話しかけた。







彼はあまり評判のいい人ではなかった。喧嘩もするし、校則も守るほうじゃなくて、




私の苦手なタイプだった。





『お・・・・おはようございます。』




すると彼はニパッと笑って



「おう」



と返した。



そして彼は少し寂しそうに



「お前さ、俺のこと嫌いだろ?」




と聞いてきた。





私は言葉に詰まったが、これ以上絡まれるのもごめんだと思い





『至って普通です。それ以上でも、それ以下でもない。普通ですよ。』






そういって立ち去った。





この時私は何故嘘でも「嫌いじゃないよ」と言わなかったのかと後悔した。








その翌日から、彼は頻繁に話しかけてくるようになった。




どうでもいい話・・・・だけど話しやすかった。



きっと評判がよくないだけなんだろうと我ながら甘い考えも持ったりして。





いつも君との距離は近くはなったけど、まだ遠いんだ。




人が嫌いな私のとって初めての友人。




人となれ合うことが嫌いな私が唯一話せた人。





いつも君から話しかけてくれる、いつも君から。




それが日常だったから。







だけど、たまには自分から君に話し掛けたら・・・・と考え始めた。





いつの間にかわたしと彼は一番仲が良くなれた。



彼も相変わらず評判は最悪だけれど、なんとなくいい人なのはわかった気がした。





だから、もっと仲良くなるために






「ねぇ」



って話しかけてみようと思うよ。














 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

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