なんとか刺客を巻いたオレたちは、これ以上並盛で平安に過ごせることはないと悟った。いい加減オレのワガママも通せそうにない。苦虫を噛み潰したような気分だった。もう少しで一般人である友達を巻き込むところだった。もちろん、オレは獄寺くんにも山本にもこんなことはしてほしくないし、オレ自身やりたくない。でも大人になりきれていないオレ達では現状を突っぱねることが精一杯だった。

「十代目、どうなされますか」

「どうって、もうこれ以上隠せないし、巻き込んだ責任もある。オレから話すよ。」

「でもよツナ、これって企業秘密ってやつなんじゃねーか?」

そうだ。オレ達の情報を持っているというだけで危険が及ぶ可能性は十分にある。それでもオレは譲れなかった。ちゃんと冷静に判断した結果である。

「もう、あの二人に隠し事なんてしたくないんだよ。大丈夫、最小限のことしか話さないし、リボーンにもいてもらうからさ」

二人はオレの意見に反論することはなかった。なんだかんだ山本は日立と気が合うようだし、獄寺くんだってああやって会話してるってことはちょっとは気に入っている証だ。思いはそれぞれだけれど、考えは一緒のはずだ。

「危険が及んだとしても、オレ達でなんとかしよう。もう、並盛にもいられないし」

「そうだな。とりあえずツナの怪我だけなんとかしないとな!」

「そうだ、大丈夫ですが十代目!早くご自宅へ帰りましょう!」

「山本、悪いけど小次郎使って園田さんと日立を探してきてくれないかな。獄寺くんはオレの手当してくれる?」

背中は自分で治療できない。応急処置程度ならシャマルから習っている獄寺くんに頼んだほうが賢明だ。

「わかった。」
「よろしくね」

山本は小次郎を呼び出しその場から走り去っていった。それを見送ってから俺たちも動き出す。右足を踏み出したところでオレはふらついた。さっと獄寺くんがオレの体を支えてくれる。

「ごめん、獄寺くん」

「ご無理をしないでください。俺がいつでも十代目の支えになりますんで。」

頼もしいな、と笑がこぼれた。オレはご覧の通り頭の冴えないダメツナだから、ちゃんと二人に伝えられるかどうかもわからないけれど、この二人がいてくれたらなんとかなるとそう思えた。


******


家に帰ってしっかり手当をしてもらってからしばらくして、山本が二人をつれてきてくれた。

「いらっしゃい。ごめん、散らかってて」

ご覧の通りゴミは散乱しているわ、読みかけの漫画はそのまま放置してあるわでなかなか格好がつかない部屋になっている。突然のことだったので片付ける暇がなかったのだ。

「別に気にしない。それで、沢田くんは大丈夫?」

「園田さんは大丈夫そうだね。よかった。」

「大丈夫じゃない!!!」

オレは緩めていた頬をピンと張り直した。もしかしたらオレが守りきれなくてどこか怪我をしたのかもしれない。少し涙ぐんだ瞳をこちらに向け、顔を赤く染めている園田さんをどうにか慰めようと思って、痛む背中に鞭打って傍による。

「ごめん。オレが巻き込んでしまって。怪我なら獄寺くんが・・・」

「そうじゃない!そうじゃなくて・・・」

沢田くんは座っていて、とそっと肩を押されて再び座りなおす。オレは次に続く園田さんの言葉を待った。

「あたしが言いたいのは、沢田くんが怪我したことが、痛いってこと!」

ひどく胸が痛いのだと、そう園田さんは言った。

「なおさらごめん。でも、これは仕方がないことで・・・」

「どこがだ。ちゃんと自分の身も守れるようにならねーと、まだまだダメツナだな。」

「リボーンさん!」

窓の方を見ると先程まではいなかったリボーンが立っていた。リボーンの言いたいことだってわかる。オレはまだまだダメツナで、自分の運命にも抗えないほど弱い。でも、守るべきものがあるから。それだけで強くなろうと思ったんだ。

「・・・リボーンもきたし。話すよ。全ては無理だけど、どうか聴いて欲しい」

覚悟を決めて、オレは口を開いた。園田さんと日立が唖然とした顔をしているのを横目で見ながら、オレは話し続けた。
突き刺さる視線が痛い。
でも、リボーンはオレの好きにさせてくれている。オレがここで話をやめるわけにはいかなかった。


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