(SS)
□空
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一目惚れ?あるかないかって?
あるとは思うけどさ、俺は絶対しないぜ。大体一目惚れって見た目100%だろ?
俺は見た目だけで惚れるなんてどうかと思う訳よ。
え?今まで遊んできた女の子達?
んなの、見た目100%に決まってんじゃん。
****
「わりぃツォン!遅れちまった!」
遅い!という目でじとりとツォンが睨んでくる。
それもそうだ。
今日はモデオヘイムへ任務だというのに、決まっていた時間はとっくの昔に過ぎている。
流石の俺も悪いと思って、俺が思う1番人懐っこい笑顔でにかっと笑った。
「悪かったって!大事な約束があったんだ。」
「ソルジャーは女と遊ぶのが任務を放っていく程の約束なんだな」
「・・・全部お見通しなわけね・・」
・・・どうやらエアリスと会ってて遅れた事がバレてるらしい。
流石タークスだよなー、なんて思いつつ冗談を交わす。
「お前の行動が分かりやす過ぎるんだ。」
「悪かったな!ほら、任務行くんだろ?出発遅らせちまった分、俺が早く終わらせてやるよ」
ふ、と笑ったツォンを横目にヘリに乗り込もうとする。
(・・・っと。忘れてた)
俺はヘリの方に向いていた足を翻して、少し離れた場所にいる一般兵に歩み寄った。
「今日一緒に行くやつらだよな?俺ザックス。よろしくな!」
俺は今日も、初めて会ったやつには必ずする軽い挨拶をした。
誰か、にする挨拶じゃなくて本当に誰にでもする挨拶。
相手に顔覚えてもらって、俺も相手の顔覚えて、たまにすれ違ったらまた挨拶をし合う。
そんな適当な挨拶だったんだけど。
だけど俺は、そいつと出会った。
はじめは、変なやつだと思ったんだ。
メット被ってる上に、ずっと俯いてるから顔は見えないし、なんだか声も上擦っていて挙動不審。
握手する時だって、俺もそいつも手袋してるのに、まるで手汗を拭うように手の平を服で拭っている。
手袋してるんだから、意味ないんじゃないかなあと思いつつも握手をした。
だけど未だに顔を上げてくれなくて。
いつもだったら、まあいいかと諦めるとこなんだけど、面白いやつだしなんとなくそんな気分になれなくて、意地でも顔と名前覚えてやる!って気持ちになってた。
そんで、握手してる手にちょっと力を込めれば驚いてこっち見てくれるんじゃないか、っていう安直な考えに至った訳で。
「ぁ・・っい、た・・っ」
む。
反応が予想以上に可愛い。
じゃなくて!
俺としては、そりゃちょっとは力入れたけど、そんなに力込めたつもりはなくて、やっぱりソルジャーと一般兵とじゃ隔たりがあるんだな、って思った。
「・・っわりい!力込めすぎた?ごめん、悪気はないんだ。その、そんな力込めたつもりなくて」
ちょっと屈んで顔を覗き込んでみる。
するとちょっと口元が見えたけど、すぐにまた俯いてしまった。
(色白・・・なんだな。)
俺はゴンガガ生まれで、肌も日に焼けた褐色に近い色をしてるから余計にそう思ってしまう。
ちょっとだけ見えた唇は薄くてほんのりピンクで。
柔らかそうだと思った。
(・・・って男相手に何考えてんだ!)
知らず知らずの内に凝視していたらしい。
しかも結構な時間。
その時間を不審に思ったのか分からないけど、ゆっくりと顔があげられた。
そして、視線がぶつかる。
空、だった。
自分の"蒼"とはちがう、もっときれいで、透き通った"青"
穢れを知らない"青"は金糸のような可憐な睫毛でコーティングされていて。
神だとか天使なんて、信じるがらじゃねえけど、もし存在するならこういうのを指すんだろうな、って思う。
じゅんすいで、きれいで、どこまでも広がる、空。
その空に雲がかかったように、すぐ俯いてしまったけど。
そして自分が長い間見つめていた事に気がつく。
自分の中では一瞬だった。
そう錯覚するくらい、惹きつけられたんだと思う。
そのぐらい綺麗だった。
「・・・・ごめんな」
俺はもう一度呟いて、すぐ手を離してもう1人と挨拶する。
(・・なんだ・・これ・・・)
心臓がばくばくする。
顔が熱くて耳まで熱い。
おかげで顔すら上げられない。
「ザックス?」
どうした、とツォンが聞いてきたけど、なんて答えたか覚えてない。
心なしか胸まで苦しい。
風邪でも引いたのかなあなんて思って、やっぱり任務は早く切り上げて早く帰ろうと思った。
(・・あいつの名前、なんだっけ・・・)
そういえば名前を聞きそびれた事に気付く。
(うっし!次は絶対名前聞く!そんで・・・・)
あの空の、色んな表情がみたいと思った。
晴れてるときも
曇ってるときも
雨が降っているときも。
笑ってるときも
困ってるときも
泣いてるときも。
なんでか分からないけど、それを1番近くでみたいと思ったんだ。
(あの空を汚して俺だけのものにしたいだなんて)(醜い俺を許して)
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