助団長編

□きっと、それが普通
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目を覚まして数秒、だんだんと頭が覚醒するのがわかった。

起きたのはさほど早くはなかったらしく、何かを考える前にすぐに目覚し時計が鳴った。

それをすぐさま止めて、椿は今の夢を思い出す。


本当にリアルな夢だった。

自分の下で乱れる愛しい想い人。


彼女の、甘い喘ぎ声がまだ耳に強く残っている。

ある筈の無い触れた感覚すら残っていそうだ。

思い出せば出すほど自分の熱が高まっていき、椿は落ち着こうと深呼吸する。


「僕は発情期の猫か!?」


悔しいけれどもその通りで。

頭を抱えるが、一向に熱は冷めようとしない。

むしろ悪化の一方である。


忘れてた方がよかったと思うと同時に、いい物を見たと思う自分がいることに気付き酷く落ち込んだ。


椿はそこではっと気付き、そっと体を起こして、布団を少し捲り上げる。

予想通りの下半身を見て、情けないとため息をついた。


両親に見つからないように部屋を出て、自身をどうにかするためにトイレへと向かった。





開盟学園の生徒会は今、校門の前で夏の挨拶期間中のため生徒会全員が集まっていた。

朝は誰よりも早く登校し、校門の前で担当の教員と共に生徒一人ひとりに挨拶していく。

椿は生徒会副会長として誰よりも積極的に行動していた。


「おー、おはよー惣司郎ー精が出るねぇ。」

「よぉ綾乃。できればこの場所変わって欲しいんだが。」

「やだねめんどくさい。」


予鈴がなるまで後5分あるかないかの微妙な時間帯で、まわりは遅刻しまいとある程度急いでいる中、

綾乃はそれをまったく気にせず、のらりくらりとゆっくり歩いていた。


そして、朝だからなのか間の抜けた、いつもより低い声が安形に掛けられる。

安形もこれまた今にも立ったまま寝てしまいそうなぐらいふらふらしながら細い目で綾乃を見た。

この二人朝はとてつもなく弱いようである。


「しっかりして下さい会長。坂城先輩、今日もそんな髪色してるんですか?」

「おはよう。副会長ー。あたし今までパソゲーしてたんですよー。寝て無いんですよー」

「、だ、だからなんだと言うんですか」

「今日は追いかけっこする気分じゃないんですよー朝まで激しく戦ってたからさー」


半ば眼を糸のようにしている綾乃に、今朝の夢の所為で過敏に反応する椿は、しっかりしろと自分に言い聞かせた。

が、どうしても綾乃の声がどうしても椿の意識を刺激し、彼の夢を思い出させる。


「ん、どうした副会長、顔紅いぞ、風邪か?」

「な、い、いや、あ、」


突然綾乃に顔を近づけられ、混乱する椿。

しどろもどろになった彼を不審に思った綾乃は、熱の有無を確かめるべく、額に手を当てる。

それでも、もともと冷え性な綾乃で、よくわからない。

最終的に、一番分かりやすいように自分の額を、相手の額にあてた。
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