犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?
□ゆびきりと約束は
3ページ/6ページ
私の大好きな、濃い赤色をしたイチゴジャム。
それをキツネ色に焼けたトーストにたっぷりと塗り込んで。
朝の光を反射してきらきら光るそのイチゴジャムトーストをがぶりとかじった。
甘い甘いトーストをゆっくりと咀嚼しながら茶色と白の溶け合ったミルクティーに手を伸ばす。
ハーブの甘い香りが鼻をくすぐった。
そんな、私の大好きないつもの朝。
のはずだったのだが。
二度寝三度寝をした挙げ句、不法侵入者と愉快な会話を繰り広げて居たらいつの間にか昼近く。
むしろ昼過ぎ。
優雅さなんて味わう暇もなく、いつもの味のトーストを口に押し込んだ。
隣に居るこいつさえ居なければ少しはましだったのに。
「一体何しにきたの」
「そのうちわかります」
いつもの無表情で、それでも上機嫌に香が言った。それが気に食わなくて。
イチゴジャムを取るためにビンに入れていた、ジャムだらけのスプーンを奴の口に突っ込んだ。
そーそうぃーとと香の口からスプーンが出てきながら聞こえる。
多分美味しいと言っているんだ。
そうに違いない。
「食べ終わりました?」
「一応」
にやにやとしながら聞いてきた。
この顔はなにか企んでいる時の顔だ。
それが私にとって良い事か悪い事かはともかく。
私の身になにかがあるのは明白である。
ミルクティーを最後まで飲み干して、食器を持って席を立つ。
香もまるでピクミ○のように私に習ってか席を立った。
それから台所まで行けば同じように着いてくる。なんなんだこの男は。
「何考えてるの?」
「それもsecretです」
はぁ、と鼻だけでため息をついた。
お皿を洗いながら、後ろで冷蔵庫を漁ってる香の考えての事を予想する。
無理だった。
彼の考えはいつだって私には複雑怪奇すぎるんだ。
小さい頃からそう。何世紀も前から。
「今日の予定を聞いてもいいっすか」
「香が居なければ今日はゆったり過ごせたの」
「それはそれはとても良い休日ですね」
バカにしたように言いながら、彼は私のオレンジジュースを一気に飲み干した。
あんにゃろ、今日のおやつの時にって楽しみにしてたのに。
「洗い物終わった感じすか?」
「終わった的な」
手を拭いて香を見れば、飲み干したオレンジジュースのパックを流しに置かれた。
せっかく終わったばっかなのに!
誰にも聞こえないよう密かに悪態をつきながらパックをすすぐ。
また手を拭かなきゃいけないじゃないか。
「じゃあ行きますか」
どこに?