犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?

□ゆびきりと約束は
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私の大好きな、濃い赤色をしたイチゴジャム。
それをキツネ色に焼けたトーストにたっぷりと塗り込んで。
朝の光を反射してきらきら光るそのイチゴジャムトーストをがぶりとかじった。
甘い甘いトーストをゆっくりと咀嚼しながら茶色と白の溶け合ったミルクティーに手を伸ばす。

ハーブの甘い香りが鼻をくすぐった。


そんな、私の大好きないつもの朝。


のはずだったのだが。


二度寝三度寝をした挙げ句、不法侵入者と愉快な会話を繰り広げて居たらいつの間にか昼近く。
むしろ昼過ぎ。

優雅さなんて味わう暇もなく、いつもの味のトーストを口に押し込んだ。
隣に居るこいつさえ居なければ少しはましだったのに。


「一体何しにきたの」

「そのうちわかります」


いつもの無表情で、それでも上機嫌に香が言った。それが気に食わなくて。
イチゴジャムを取るためにビンに入れていた、ジャムだらけのスプーンを奴の口に突っ込んだ。

そーそうぃーとと香の口からスプーンが出てきながら聞こえる。
多分美味しいと言っているんだ。
そうに違いない。


「食べ終わりました?」

「一応」


にやにやとしながら聞いてきた。
この顔はなにか企んでいる時の顔だ。

それが私にとって良い事か悪い事かはともかく。
私の身になにかがあるのは明白である。


ミルクティーを最後まで飲み干して、食器を持って席を立つ。
香もまるでピクミ○のように私に習ってか席を立った。
それから台所まで行けば同じように着いてくる。なんなんだこの男は。


「何考えてるの?」

「それもsecretです」


はぁ、と鼻だけでため息をついた。
お皿を洗いながら、後ろで冷蔵庫を漁ってる香の考えての事を予想する。

無理だった。
彼の考えはいつだって私には複雑怪奇すぎるんだ。
小さい頃からそう。何世紀も前から。


「今日の予定を聞いてもいいっすか」

「香が居なければ今日はゆったり過ごせたの」

「それはそれはとても良い休日ですね」


バカにしたように言いながら、彼は私のオレンジジュースを一気に飲み干した。
あんにゃろ、今日のおやつの時にって楽しみにしてたのに。


「洗い物終わった感じすか?」

「終わった的な」


手を拭いて香を見れば、飲み干したオレンジジュースのパックを流しに置かれた。
せっかく終わったばっかなのに!

誰にも聞こえないよう密かに悪態をつきながらパックをすすぐ。
また手を拭かなきゃいけないじゃないか。


「じゃあ行きますか」


どこに?
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