急がば回れ。…回りたくない時もある。

□愛してるをプレゼント
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俺は今から、今年で一番大変な賭に挑もうとしている。
むしろ人生で一番の大変な賭だ。人生を左右すると言って過言ではない。
むしろ足りないぐらいである。

もし誰かにやらなくてもいい賭じゃないかと言われればそこまでだが、俺はやらなければならない。
なぜなら、


俺は春海が好きだからだ。



諄くなるが聖なる夜、クリスマスに俺は一世一代の勝負に出るわけだ。

勝てる確率は2分の1。
しかしその1は随分偏って見える。
それを考えてる度に不安が付きまとう。




愛してるをプレゼント





もしかしたら彼女にしたら欲しいプレゼントじゃないかもしれない。
よろこんで貰えないかもしれない。

だが付き合って3年。
俺は春海を幸せにしたい。
全てを愛してる。

だから一生を共に過ごしたい。
クリスマスをきっかけに恋人の関係を変えてしまうつもりでいたが。


心臓がうるさくてしょうがない。
今にも口から飛び出しそうだ。

しっかりしろ大英帝国!


俺は今日の為に一本のバラを用意した。
もちろん春海の為なら百本でも用意できたが、今日は真実の愛を伝えたいが為に、選りすぐりの一本を。

俺の家で一番美しい赤で、形が綺麗な、香りが良く、小柄な名前が持っても大き過ぎない大きさのものを。
よろこんで、くれるだろうか。


今の俺は日本では幸せがあると言われているらしい小さな箱を握りしめ、何度も練習したセリフを口に出す。
体が震えているのが自分でもわかった。

体は震えても声だけは震えないよう細心の注意をして。
口を開く。


「春海を愛してる。結婚してほしい」


噛まずにいえた! と心の中でガッツポーズ。
俺は箱を助手席のバラの隣において、深呼吸した。

大丈夫、絶対言える。


俺は腕時計で時間を確認する。
約束の時間まであと30分。まだ練習の時間はある。


しかし今になって本当にこれだけでいいんだろうか。
もっと気の利いた言葉があったんじゃないかと不安になる。
もっと紳士的な、格好いい言葉を選ぶべきなんじゃないだろうか。


車の中で一時間を過ごしながら考え込む。
さっきまではシンプルなものの方が良くないかと先の一言になったが・・・・・・

やっぱり俺がどれだけ春海の事を愛してるかわかるぐらいの言葉が良いかもしれない。
あいつはあれで鈍い所があるから。


「愛してるの一言は外せないよな」


なんて1人呟きながら言葉を選ぶ。
愛してる、は一番俺の気持ちを正しく表した上でこれ以上ない愛を示してるつもりだ。

欠点はただ一つ。
決して先に言われてはならない。
「俺も愛してる」と言うのに続けてプロポーズはあまり格好付かない。


だから、先に言われないよう気を付けなければ。
・・・・・・どうやってかはわからない。
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