急がば回れ。…回りたくない時もある。

□すこしずれたへんごころ
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メリークリスマス椿!


椿を家に呼んで、彼が扉を開けた途端クラッカーを鳴らして言った。
突然の事に驚き慌てふためいた椿が愛おしくて思わず力一杯抱き締めた。

秦葉君や安形君は私のそう言う所が不用心だって言うけど気にしない。
私が抱き付けば少し驚いた後に後ろに回されるその手が大好きだから。
そのために抱き付いてるってもんだ。


しかし今日は驚き過ぎたのかなかなか椿は動かない。
抱き付いてる体も心なしか堅い。

さすがにドン・○ホーテで選りすぐった通常の十倍サイズは心臓に悪かっただろうか。
どさくさに紛れて腰を撫でてみる。胸板に顔も埋めてみる。あ、意外に筋肉付いてる。
なるほどやりすぎたらしい。なんの反応もない。


「え、あ水瀬?」

「なに? 椿」

「ドアが開け放しなのだが」


やっと反応したかと思えば若干ズレた言葉が上から降ってきた。
ああそうだった椿はすごい照れ屋さんなんだっけ。そこも可愛いなあ。
抱き付いたまま手を伸ばしドアノブを引く。

バタンと音がしたのを聞いた椿がやっと私の背に手を回してくれた。
幸せな一時である。


「今更だが水瀬の両親が来たらどうするつもりだ愚か者!」

「本当に今更ながら母さんと父さんは今日はいないよ?」


顔が真っ赤な椿に答えれば、えええ! とあからさまに動揺した。
可愛い愛おしい愛くるしい。
そんな椿の頬に軽く口付けてどうぞ、と中へ案内した。


「今日二人は外食なんだよ」

「水瀬は行かなくて良かったのか?」

「椿と居たかったからさ」


えへ、と我ながらなかなか甘い事を言えば、椿は名前通り椿の花みたいに真っ赤になっていた。
今日は一段と挙動不審な彼がそうか、なんていつもは怒るところで怒らなかった。

椿が戸締まりは大丈夫か、と言ったので閉める気は無かったが閉めておく。
両親が帰ってくるのはまだまだ先だし良いだろう。


「で、何する? ご飯はもう用意出来てるから結構暇なんだけど」

「じゃあ・・・・・・」

「野球拳?」

「しない!」


おお、椿は野球拳知ってるんだ、とかどうでも良かったけど名案が拒否されてしまった。
椿は考えこんで、やっぱり彼らしい答えを出してくれた。


「トランプ?」


ああ私の彼氏はなんて可愛いんだろう!
頭が良いくせに一周回ってバカな所が可愛くて可愛くてしょうがない。

なんだろう、椿の可愛さは体がムズムズすると言うか、抱き締めたい可愛さだと私は思うんだ。
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