急がば回れ。…回りたくない時もある。

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25日、朝。

朝起きれば枕元にあったのはプレゼントではなく、一枚の紙切れだった。


どうせアーサーがいってきますの言葉と愛してるのいつも通りの言葉だろう。
この年になって枕元のプレゼントを期待してた訳ではない。

ただクリスマスにすら朝のあいさつもないという事に腹立たしさを感じているだけだ。


一応なにか変わりはないかと紙切れを摘んでみれば、アーサーの達筆な字で一言。


“dear春海


相も変わらぬ魔力の溢るる暗き部屋へ向かえ”


「は?」


向かえ、という事は場所を示している訳だが。
正直は? である。

これは私に向けられた物だろうか?
それともアーサーのメモだろうか。


しかしわざわざ私宛になっている。
つまりは前者だ。

向かえって事でいいんだろうか。
いや、どこに?

相も変わらず魔力の溢るる暗き部屋ってどこだ。
アーサーの広い家の中から探せと言うのか。んなアホな。


「魔力の溢れるてどういう事だ」


しかも相も変わらぬはなんか付け足したみたいで不自然だ。
意味分からないししょうがないから探しに行こう。アーサーを。
てかいるのかこの家に。

カーディガンを羽織り、まずはベッドから起き上がる。
うん、寒い。


「魔力ってなんだろうな」

部屋と言うのだから場所だろう。
きっとそこにアーサーがいるはずだ。


部屋から出て、適当に歩く。
メモの意味を必死に考えながら。

ヒントとなりそうなのは暗い部屋だって事ぐらいだ。
暗い部屋とか電気付けてなければ全部暗いじゃん。

やっぱりヒントにはならなさそうだ。


「連想ゲームかなにか?」


アーサーの考えそうなこと・・・・・・魔力と言えばアーサーだけど。
アーサーと言えば変態だ。
変態と言えばアーサーだ。




・・・・・・あれ、終わった。
無限ループじゃん。


「魔力と言えば魔術だよね」


まったくアーサーらしいとは思うが迷惑な話だ。
むしろ部屋を片っ端から探せば良いのだろうか。

あ、なんかそれは面倒くさい。
朝からそんな事はしたくない。


さて連想ゲームの続きをしなければ。

クリスマスだし、ちょっとぐらいは遊んでも良いだろう。
しかし、早く見つけてやらないとアーサーにも仕事があるし・・・・・・なにより泣き出すじゃないか。


「魔術と言えばアーサーだ」


アーサーと言えば・・・・・・と言うとまた続くので止めよう。


魔術と言えば。

魔法? いや、変わらないな。
ならばなんだろう。


魔術に関する物。
魔道具? なべ。魔術書。猫。カエル。なんかの爪とか。杖。

キッチンかな。と思ったがキッチンは今の時間明るい。
溢るるという事はいっぱいあるという事だろうと考えれば。


まず猫とカエルは論外。
なんかの爪とかはノーコメント。
杖もアーサーの家には・・・・・・多分無い。

だとしたら魔術書が妥当だろう。
・・・・・・書斎は一番遠い部屋じゃないか。


あいつ私が部屋を虱潰しに探す事を考慮して決めやがったな。


足を書斎へと向け、なるべく早く進む。
多分書斎にはアーサーが待ち構えているのだろう。
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