急がば回れ。…回りたくない時もある。

□灰被り、始めました。
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むかしむかし、あるところに、可愛らしいシンデレラがおりました。


「あー、くそダル」


彼女の名前は春海・水瀬。
水瀬家の一応、三女であり。正当な血を引く唯一の女性です。

勿論、三女と言うからには彼女には2人の姉がいました。
ただ、彼女たちと春海は血のつながりはなく。
形としては姉妹である。と言うだけでした。


「あのクソ親父さっさと死にやがってまじざけんなよ」


彼女の母親は早くに他界してしまいした。
幼い彼女に対し、強く意志を持ちなさいと言い残し。

そして母親が亡くなってしばらくした時。
彼女の父親は新しい母親と結婚したのです。
姉二人を連れた、バツイチである継母と仲良くなることは春海にはできず。
影で言い合いをしながら何年も時が過ぎました。

そしてある日突然。
彼女にとって唯一の家族である父親もついに他界してしまうのです。
ああ、なんて可哀想な春海。


「お陰であのババァの好き勝手じゃないか」


面倒臭い。と一言つぶやいて彼女は今日も床を掃きます。
そう、やりたい放題になった継母、継姉は春海を虐げ。
掃除を押し付け灰を被った彼女を灰被り姫、シンデレラと笑いました。

そんな彼女は灰を被りながらも、母親に言われた様に意志を強く持ち続けていたのです。


・・・・・・強すぎるくらいに。


「次は雑巾掛けか」


はあとため息を一つ。
もう抵抗するのも面倒で抗議なんてしなくなった最近。

食器洗いでガサガサになった手のひらを気にしながら彼女はバケツの中の雑巾を絞りました。


そんな春海の姿をみて継姉がくすりと笑いましたが、彼女自身は気にもしません。
彼女にとっては継姉は姉でもなく、最近小皺が増えた近所の人にしか見えないのです。

近所の人というかもろ同じ家に住んでても、そんなの関係ありません。
自分もいつかシワが出きるんだろうか、と将来に身震いしながら今日も今日とて足で雑巾を踏みつけ動かします。

最近見つけた一番効率的な雑巾掛けの仕方です。


最近年を感じてるのか、婚活に必死な姉を見て、自分はどうやって父の望んだ通り水瀬家を栄えさせる事ができるだろう。
出来れば結婚以外で。と付け足すのを忘れずに言えば、後ろで聞いていたらしい継母が怪訝な顔をしてこちらをみた。


「何か用?」


聞いてみても返事はありません。
春海がギロリと目つきを悪くさせて見やれば、継母はすぐに退散していくのです。

なら最初から近づかなきゃいいのに。
彼女はいつも思います。
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