急がば回れ。…回りたくない時もある。

□日本茶と紅茶
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新しい物、大好き

流行ってる物、もっともっと好き

マイノリティ、威張れない

恐れ入ります、すいません。



昨晩に懐かしいこんな歌を聞いたからか。
あたしの夢はなんだかとても唐突だった。



「おはようございます」


短くきられた黒い髪。
死んでいるような、生気あふれているような、考えてる事が読めない瞳。
それは黒すぎてあたしの顔が見えるほどで。

日に焼けていない白い肌は日本人独特の黄色。
声は見かけによらずバス寄りの低さ。


しかしその存在は儚げで、触れれば散ってしまう花のようで。
花にたとえるなら儚い桜か気高い椿か。


そんな藍色の着物に身を包んだお兄さんが、隣で寝ていた。
そんなアダルティを想像させる朝。


「だっ」


ぱしん、と良い音がして口を抑えられる。
しー、とご丁寧にジェスチャー付でたしなめられ、今が朝だと言うことを思い出した。

それと同時に急ピッチで活性化していく頭。
状況を判断しようと自然と視界が動く。

しかし何一つわかる事なんてない。
強いて言うなら、身の危険を感じると言うところか。

「だめですよ、アーサーさんが起きてしまわれますから」


そうだアーサーだ。
不審者如き元ヤンが一掃してくれるに違いないというかどうやって入ったんだこの部屋に。

黒髪お兄さん・・・・・・でもあたしより年下そうなお兄さんがにこりと笑った。
あ、シャッターチャンスだったんじゃね。


いや、例えイケメンだろうが犯罪者は犯罪者。
変態は変態である。

ストーカー行為、ダメ絶対。


「不審者ではないのでご安心下さい」


どこが!


声は出せないので盛大に心の中で叫びながら。
あたしはとにかく逃れようと体を動かした。

くそ! 動く度に布団が絡まるのはなんでだ!


「まさか本当にアーサーさんがトリップしているとは思いませんでした」


さも嬉しそうにお兄さんはまた笑う。
楽しそうでとても羨ましい。

・・・・・・嫌味である。


勿論それはあたしが楽しくもないので、思ったわけだが。
それが嫌なら説明をして頂きたい次第である。


まずアーサーはどうしたんだろう。
この青年によってどうにかされたのだろうか。


・・・・・・あれ、この人なんでアーサーの事知ってるんだろう。
まさか本当にトリップ、とも言っていた。


ごくり、と固唾が音をたてて流れていった。
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