短編
□寂しいと呟いて
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「だからここはxとyをだな……」
「ふ、む……あ、できた」
私がそう呟くと、だろ!?と嬉しそうに目の前の男、ギルベルトは言った。
今はテスト一週間前。
幼なじみであるこいつの勉強はどうだろなんだろう、わからなさそうならみてやろうなんて冷やかすつもりで家を訪ねた私。
どうしてこうなったかと言うと。
「お前、数学苦手だったよな?」
と、ギルが言ったのを皮きりに私の勉強会なるものが始まってしまったのだ。
本当は私が得意な英語を教えてやるつもりで来たのに、なんて事だ。
もちろん英語は教えた。
しかし覚えるのが驚くほどに早く、あっと言う間に範囲すべてを理解してしまったのだ。
そこでギルが数学の事を口にして。
今に至る訳である。
「ギル頭いいんだね。知らなかった」
「俺様だからな! 早苗とはできが違うんだよ!」
「ほぉう、中学の英語はアルファベットすら書けなかったくせに」
「む、昔は昔だろ!」
確かにそうだと心の中で同意だけして、次の問題に取りかかる。
昔は私よりもちっちゃかったギルはあっと言う間に私よりも大きくなって男らしくなった。
対して私は中学生になってからは全然大きくなれないし、随分女の体つきになった(と思う)。
もう私とギルはお風呂も一緒に入らない。
はっきり言って、赤ちゃんの時からずっと一緒だったのに、離れてしまって寂しい。
だから偶にこうやってなんとか理由付けで遊びに来ているのだ。
それは私が昔みたいに2人でいたずらしたり喧嘩したりしたいからだ。
それはきっと私がギルを自分の体の半分みたいに感じているから。
なんか寂しい。
頭がだんだんぐしゃぐしゃしてきてなんでか無性に寂しくなってしまったから、気を紛らわせようと私は話題を探す。