急がば回れ。…回りたくない時もある。

□僕らの屋上に誓う
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はっ。気付いたら真っ暗な世界の中に居た。
首を回すとやっぱりまったく見えなくて、まず私はどこにいるのかと、何時なのかを知りたい。

ポケットに携帯が入ってたはずだと腕を動かそうと思ったが動かなくて。
真っ暗な中で動けない。もしやこいつぁ金縛りって奴だろうか。


ひいいと体を振るわせると、動けないのはなにかにがっちりホールドされてるからだと気付く。
うわああああつかまっ、捕まってる! やだ怖い怖い怖い。

無理矢理にでもほどこうと体をよじれば、駄目だと言うようにきつくなる。


「アーサー先輩ぃ……」


そうだここは生徒会室だ。
あっという間に日が暮れて暗くなったんだろう。
先輩はどうしたんだ。もしかして忘れられて帰っちゃったのかも。

だって先輩が居たら電気ぐらいつけてくれる筈だ。
私が恐がりなのしってるから、偶に意地悪はするけどちゃんと守ってくれるもの。


「ひっ……!?」


もぞりと横腹でなにかが動く。目が慣れてきたからか、自分の体のすぐ横に何かが居るのがわかった。
……あれ、これって。

横腹のなにかが位置を変えていく。冷静になっていった頭が、これは手だと判断する。


「アーサー先輩?」

「あ? 起きたか?」


起きたかじゃねえよ。
なんで一人掛けのソファで無理矢理二人で横になってるんだ。

しかもいつから起きてたのかそもそも寝ていなかったのか、アーサー先輩の声が聞こえた。


ああもうまったく!
すっかり同じ体温なってしまったアーサー先輩を突き落とせば、なんでだよぉと言われた気がする。

二度と生徒会室で昼寝なんかしない。


「じゃ、行くか?」

「は?」


暗闇にもなれたのか、さっきより明るくなったように感じた。
立ち上がった彼の姿も見えたので、さして不自由も無い。

ただ電気も付ける様子もなく、どこかへ行こうと言う先輩の考えはまったくわからなかった。


どんな表情をしているかまではわからない先輩は優しい声で私を呼んで、その手を差し出してくる。
その手をつかめば、薄暗い廊下へと飛び出すことになる。
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