急がば回れ。…回りたくない時もある。
□ばばろあがーる
2ページ/5ページ
さくり。メイプルがたっぷりかかったホットケーキの一切れに、この前二人で買ったニコニコマークの描かれたフォークを刺した。
私の隣にいるマシューが焼いてくれたこの特製ホットケーキは、私が大好きなふわっふわホットケーキだ。ホットケーキって言うより、パンケーキって言ってあげたいくらい。
ひょっとすると私が違いをよく理解していないだけで、もしかしたら本当にパンケーキなのかもしれないけど。そこはまぁ、美味しければすべて良しだ。
外の雪みたいな粉砂糖が振りかけられたその上から、琥珀色のメイプルがとろりかかっている。どうして甘いものの見た目ってこんなにも愛らしいのだろう。
隅から隅までずっと見ていたいけど、そろそろマシューが待ち構えているから。
隣でにこにこしているマシューに見せつけるように、フォークで持ち上げたふわふわな生地を口に運ぶ。
メイプルは私好みの甘さ控えめ。生地の甘さと重なって、バターの匂いと一緒に口のなかで広がった。
視界の端では、マシューのくるりと一回転したアホ毛が揺れている。
「おいしい?」
「マシューが作ったんだから美味しいに決まってるじゃない」
溶けるように無くなってしまったパンケーキが恋しくて、間をあけずもう一口を頬張った。ううん、幸せ。
自然に頬が揺るんで、多分だらしない顔をしているだろう。毎回のことだし緩むものはしょうがないけど、マシューはどう思っているのだろう。
だらしない顔してると思われたら嫌だな。なんて思いながら彼の顔をうかがってみると、あの白くて大福見たいなほっぺたが真っ赤に染まっていた。
え。え。
動揺する私の姿さえ視界に入らないのか、マシューは未だに顔を赤く染めて所謂照れと言うものを全身で表現している。
やだ、この子すっごく可愛い。
「照れてる」
「てっ、照れてなんかないよ!」
そんなこと言ったって、私のにやにやは治まらない。身悶えまでしてしまいそうになるけど、必死に理性で抑えてみる。
もっとも、頬を緩めているだけで充分マシューは照れているんだけど。
「んもう!」
湯気が出そうなほど真っ赤になった顔のマシューを宥めるつもりで頭を撫でる。それを不服そうに受け入れる彼がまた可愛らしくて、またにやにや笑ったら、こんどこそそっぽ向かれて拗ねられた。
しょうがないからプレゼント交換でも始めようと思う。