急がば回れ。…回りたくない時もある。

□難関を越えた先は
2ページ/8ページ



「春海とデートに行くのか兄さん」

「な、なぜそう思うんじゃ」


驚いた。
驚きに驚きすぎてかんでしまうほどに驚いた。
まさかあの嘘がばれてしまうとはまったく思わなかったから。


「兄さんさっきからずっと独り言を言ってたぞ」

「まじでか・・・・・・」


ばれてしまった物はしょうがない。
というか最初から隠せていなかったのだが。


「で、どう思う?」


ここは素直に打ち明けて協力してもらうのがいいだろう。
頼む弟よ! お前意外に頼める奴がいないんだよ!
そんな縋るような気持ちで俺は改めて聞いてみた。


しかし俺様の弟は悩んだ挙句、春海の喜びそうなところがわからない。という答えに行き着いた。
それでも参考にならないかとマニュアルを自分の部屋から持ってきてくれた。さすが俺様の弟、頼れるぜ。


うきうきとマニュアルを開いてみれば、いつしかヴェストが読んでた本だった。
‘初級「恋人との付き合い方ドイツ人向け」’ってなんでヴェストがこんなものを読んでたんだろうな・・・・・・。
まさかあいつ誰か好きな女が・・・・・・!?
いや、とりあえず今はそれどころではない事を思い出した。

まぁ最初ぱらぱらと捲り、最終章はどこと無く役に立ちそうだったので熟読する。


その1。
雰囲気のあるレストランに誘う。

その2。
花や指輪を送る。
相手の好みに合わせましょう。

その3。
指輪を渡した後は感動して相手が泣きだすことが多々ありますので事前にハンカチを用意しておきましょう。
その場合ハンカチで相手の顔を上下左右綺麗になるまでふき取る。


なんだわかりやすいのがあるじゃねぇか。
レストランだな。


続きを読んでいこうとしたら、まだ俺の部屋にいたルッツが首を振って俺に言った。


「兄さん・・・・・・それはやめておいたほうが良い」

「なんでだよ」


むぅ、と思いながら俺は言われたとおりに前のページにもどり読み始める。
しかしふとルッツが怪訝な顔をして聞いてきたのだ。


「春海は誘ったのか?」

「あ・・・・・・」

「どうやって誘うんだ?」


・・・・・・忘れてたぜ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ