急がば回れ。…回りたくない時もある。

□書き直し計画、始めます。
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でもやっぱり怖い。


ドアノブを捻って押したまでは良いが、やはり浅慮である現代っ子の勢いが怖くて。

ついさっき少し押した扉を勢いよく引いた。
小心者と呼ばれても良い。
未知の世界と云うものはいつでも恐ろしくあるものである。


「どうしよう」


あたしにしては相当短慮にあり過ぎた。慣れない場所でのミステイクだ。
このままじゃ大変な事になるだろう。

具体的に云うと、命に関わる大惨事になってしまう。


「なにをどうするんだ?」

「最近の若い子はナイフ持ってるって聞くから・・・・・・」

「んな訳ないだろ」


あれ? あたしは一体誰と会話しているのだろう。
うつむいていた視線を上げれば、そこには金髪不良がいた。

事態が突然すぎて肩が大きく揺れる。予想した出来事がフラッシュバック。
しまった油断した。刺されるかも。


「アーティー? 誰?」

「知らね」


ふるふると身構えているうちにあたしを除け者にして会話が始まってしまった。
もしかしたらこれは仕事にならなくなるやもしれない。それは困る。
でも刺されるよりはずっと良いかもしれない。

そこであたしは気付いた。

彼の手にはナイフは無い。もしかすると命に関わりは無いのかも。
と、すると。今一番重要な事とは何か。


仕事。


あたしは直感的に自身の首にぶら下がっている、来校者のタグを突き出した。
慌て過ぎてタグを持つ手が震えてしまったようなしまわぬような。


「なんだそれ」

「作家の水瀬春海です」

「ヒーローのこの俺に取材に来たのかい?」


いいえ違います。
誤解は早めに解いて、失礼しますと中に入り込んだ。

仕事なのだから仕方がないと割り切って、開き直って部屋を見回す。
机が4つほど中心に集められていて、奥には窓をバックにした一つ目立った机。
右手には少しばかりスペースがあり広さを持て余しているよう。

中に居るのはたったの5人。それぞれの席に座っているようで、その所為かやっぱり広く見えた。

但し、金髪不良は未だ席に座らずあたしを見ている。


ぐるりと見回した結果、多分奥のそこが生徒会長の席なのであろう。上座だし。
まるでこじんまりと小さくした編集社だ。


「改めまして、作家の水瀬です」

「初めまして春海さん、思ったよりずっと若いんだね」

「話は聞いてるアル」


どうやらうまく事が進んでいきそうだ。
にやり、といつものペースに満足して笑った。
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