急がば回れ。…回りたくない時もある。

□流星に乗って
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もう何度も押し慣れたはずのチャイムを、今日もまた震える手で押した。

数秒待って出迎えてくれるのは、いつものブロンド。
細められている宝石の様な目に、どきりとさせられる。


ボンジュールといつもと変わらない挨拶て彼は中に招いてくれた。
中は外の気温と反比例して暖かかい。当然私の手先や鼻も暖まっていく。

背中の扉が閉められて、寒い風が入らなくなる。暖かさにほっとしてコートを脱いだとき、突然なにかに包まれた。


「ジュワイューノエル」

「……?」


何かがフランシスだと言うことはすぐにわかった。だがしかし何を言われたかがさっぱりわからず、答えられない。

彼の暖かい腕の中でぬくぬくしていると、しびれをきらしたフランシスが体を離した。
その表情は少しばかり不服そうで、私が首を傾げるとメリークリスマスと怒鳴るように言った。


なるほど、フランス語か。
うろ覚えで同じように返したら、彼は満足げに私の髪を指ですいた。
その手が私はたまらなく大好きで、うっとりと目を閉じる。

真っ暗になった視界。彼の手がまた私の髪を梳いたかと思うと、まぶたの上に何かが落ちた。
ぱっと目を開けば、間近にあるフランシスの顔。端麗な顔がすぐそこにあって、思わずどきりとする。


目を見開いたて狭くなったであろう私の額に、フランシスの唇が当てられた。


「さ、中に入ろうか」

「はーい」


手を引かれ中へ足を進めると、フランシスの香りとまた別の甘い匂いが私を包む。
いい香りに深呼吸するとフランシスが笑った。

本当に甘い物好きだねと握る手を強くした彼は、満更でもなさそうだ。
本当は甘い物の倍フランシスの事が好きだけど、そんなこと口が裂けても言えない。


「今日のケーキは何?」

「見てからのお楽しみ」


そう言って頬を緩めて笑った彼は、私に手を洗ってくるよう洗面所を指差した。
言われるままにそこへ向かい、洗面台の鏡と向き合う。


ズレたバルーンスカートを元に戻し、髪も手櫛でで整えた。
めったにしない気合いを入れた化粧が崩れていないのを確認したら、私はリビングへ向かう。


暖炉で温まった広いリビングでは、フランシスが忙しなく動いていた。
ワイングラスを布で磨き、テーブルに置く。今日は特別だよと言った彼の視線の先には、フランス料理が既にフルコースで並んでいた。

いや違う。デザートだけがない。


席について前に座るフランシスを見てから、手を重ねお祈りを始めた。
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