急がば回れ。…回りたくない時もある。
□浮かれた三田野郎
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人生で一番最悪な日だった。
今年は付き合って一年半になる彼氏と、二回目のクリスマスになる予定だった。
去年はお互い予定が入ってしまって、二十三日にクリスマスを過ごした。二人で過ごす事はしたけど、やはりクリスマスって言うのがよくて。
今年こそ二人で二十四日のクリスマスを楽しむはずだったのに。
ついさっき、フラれたのだ。
そりゃ、私だってよくわからない。
待ち合わせ場所で待つこと三十分。今年のプレゼントであるブランド物のマフラーもばっちり用意して、あとは彼が来るのを待つだけ。
スカートはおかしくないか、髪やメイクは崩れていないかを何度も確認した。
今日一日の楽しい計画を思い浮かべている最中、彼はやってきた。
ただし、一人じゃない。
腕を組んで彼が連れてきた女性。
最初なにが起こったのか理解できなくて妹さんかと思ったが、そんなことあるはずがない。
そして、私が大好きだった笑顔を浮かべて一言。
「この子と付き合う事になったっス」
あ、そっスか。
気付けば道の真ん中で彼の整った顔に平手打ちをかまして、全力で駆けだしていた。
あああなんだよそれふざけんなよ。
私のいろいろ返せよ。
なんて思っても二度と会う気になれなくて、今にも腸煮えくり帰りそうな中。
適当にスタバに入って貧乏揺すりしていた。
周りはクリスマスと言うこともあって、ふわふわしたコートを着る女の子や、やけにそわそわした男子ばかり。
待ち合わせしてる奴らみんな不幸になれ。
そんな事を思いながらグランデサイズのカプチーノを啜った。
まったくやってられっかよ。
世間はまだ真っ昼間だが、窓から見える男女のカップルが目について。
どうせあいつらも夜になったらプレゼント交換とかして限定のディナーを楽しんで聖夜ならぬ性夜と洒落込むんだろ馬鹿にしてんのか。クリスマスはカップルの為にあるんじゃねぇんだぞ。
未だに思い返してもなにが起こったのかよくわからない。
浮気されてたのかあっという間に心変わりされたのか。
とにかくわかる事は奴に心の純情を弄ばれたと言うことだ。怒りばかりが湧いてくる。
もう男なんか二度と信じない。
滲んできた視界を必死にごまかして、またカプチーノを飲み込んだ。
「なぁねぇさん」
「はぁ?」
スタバの角にある狭い席。たった二人しか掛けられないそこに突然誰かが座ってきた。