急がば回れ。…回りたくない時もある。

□hug me!!
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二人掛けのソファに座って、フェリの肩にもたれ掛かる。
本当はこのまま押し倒してしまえればいいんだけれど、流石にフェリに下品な女とは言われたくない。

フェリから香ってくる匂いに心臓がばくばくと胸を打ち鳴らしている。
あばばばば、もう少し大きく息を吸い込んで良いだろうか。なんでこんなにいい匂いするんだろう、女子力ならぬ男子力って奴ですか。


「春海?」

「はいなんでしょう!」


肩に頭を押し付けて居たのがばれたのか、頭の上から声が降る。
もしや怒られるのかと身構えると視界の端のフェリの手が挙がった。

殴られるんだろうか。もしそうだとしたら私はキリストの様に反対側も差しだそうじゃないか。


「あれが凄いのはわかるけど……」


挙げたフェリの手は、部屋の真ん中を陣取っているそれを指差していた。
さっきスイッチを入れたので、巻き付けたイルミネーションがきらめいている。家の飾れる物ありったけを飾った大きなクリスマスツリー。

あれの所為で物置はごちゃごちゃになってしまったけど。
フェリもそのことを言いたいのだろうけど。


「フェリが来るから頑張っちゃった!」

「そっか、春海凄い!」


クリスマスに免じてか、物置のお咎めがそれ以上来ることはなかった。
褒められちゃったし、お正月あたりまでツリーは飾っておこう!

私がフェリの肩にまた頭を押し付け始めると、彼は小さくなにか呟いた。
今度はなんだと顔を覗き込んだら、にっこり笑ったフェリと目が合う。


「思い出したよ。金魚のやつだよね」


はて、一体なんのことだろうと首を傾げそうになって、気付いた。
さっきの話だ。映画の話。

なにをきっかけに思い出したのかは分からないが、フェリの中ではずっと引っかかっていたらしい。
そんなフェリも可愛い。どうしようやだ可愛い。


「それがどうかしたの」

「うん、思ったんだけどね」


フェリの白い手が私の頭を撫でる。すすうと、今朝私が懸命にとかした髪を指が梳いていく。
うっとりしながら次の言葉を待った。


「俺も何年経ったって君を幸せにしたいと思うよ」


そんな、私を見ながら格好いい事言われたら、どうしていいかわからなくなっちゃうじゃないですか!
あああもう、幸せにしてくれるってそれはイタリア人の風習のナンパですかそれとも、ああああれですか。もしかしてプロポーズって奴ですか!


「フェリ、大好き!」




》あとがき
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