急がば回れ。…回りたくない時もある。
□サンタが笑う
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日本のクリスマス。
企業がこぞって品を赤と緑のクリスマスカラーにして、イベントでの売上向上を狙っている。
今年こそ私はそんな手には引っかからない。
なぜなら私の引き出しの奥にはサンタが居座るスノードームが三個もあって、冬しか使えない靴下型のろうそくが四つあるからだ。
毎年雑貨屋で一目惚れしては購入して、使わずに残ってしまう。もううんざり。
一年中使えるならまだいい。
それが赤と緑で彩られ、おまけに雪までついちゃったものなら。
クリスマスグッズを一年中部屋に置ける私ではない。
だから今年こそは雑貨屋にも行かないし自分にプレゼントも買わない。
そう堅く誓っていたのだ。
「メリークリスマス春海!」
「なにそれ」
付き合って長くなる、恋人のアルフレッド。
毎年彼がアメリカから動けないらしく、私がニューヨークだカリフォルニアだと訪ねていたのだが。
今年はなんの巡り合わせかアルフレッドが日本に来ることになったのだ。
今までのクリスマスグッズを総動員して部屋を飾り付けた。
夕飯は外食の予定だから見せるのは後になるけど、キャンドルも全部使ってやろうと思って。
帰ればクリスマスグッズがぎっちり部屋に並んでいるのだ。
なのにこいつときたら。
「ちょっと早いけどクリスマスプレゼントだぞ!」
空港まで迎えに行くと言ったのに一本早い飛行機で突然お宅訪問しやがるし、私はまだ化粧品もしてないし、そもそも着替えも途中で。
それに加えて奴が抱えてきたものときたら。
「向こうで買ってきたんだ、クリスマスグッズ好きだろう?」
そりゃ好きだけど。好きだけど。
大きすぎてきっと飛行機では別料金だったのだろう。なにか不思議な色のシールが貼られたその箱は私が両手で抱えるには大きいくらい。
私が重たいと受け取れずに居れば、彼は玄関で箱を開け始める。
あ、あなたが開けるのねと思った時には箱いっぱいの雪だるまやサンタがこっちを見ていた。
玄関の飾り棚では、一昨年買ったサンタの人形がにっこりわらっている。
とてもよく似ていた。
あ……頭が痛い。