急がば回れ。…回りたくない時もある。

□僕らの屋上に誓う
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授業後の生徒会室。日が短くなったてと言っても、大きな窓のついたこの部屋はまだまだ明るい。

時折廊下に響く吹奏楽の音が、放課後の空気を震わせた。


日の光がアーサー先輩の髪を照らしてきらきら光る。
とってもきれいで見とれてしまう。ソファに寝転びその姿をじっと見ていた。


「せんぱーい」


自身の机に向かい未だに執務へ励む元生徒会長。
彼が手にするプリントは、本来アルフレッドという今の生徒会長が持ってなければならないのだけれど。

未だに癖になってるのか生徒会室に毎日通っている。


私も先日庶務から副会長になったのに、全然仕事していない。
まぁその前に考査があるから、私は勉強の方を頑張らなきゃいけないんだけど。碌に見ていない暗記カードをめくる。

もちろん見に入るわけもなく、毎日先輩がプリントに目を通して居るのを横のソファから眺めるのだ。


「春海?」


そんな先輩はたったいま私が呼んだ声に反応して、数時間ぶりに顔をあげる。
少し疲れた顔をしてるけど、大丈夫かな。


「ひまでーす」

「仕事しろ」


だってあなたが持ってるその紙が私のじゃないですか。なんていうわけにもいかなくて。

気が向いたらなんて適当に返して、私はごろり寝返りを打つ。


「パンツ見えるぞ」

「やーい変態」


背中にかけられた言葉に、スカートを直そうと手を伸ばす。
伸ばした先のスカートは全然めくれて無くて、やられたと思いながら彼が見える様に元の体勢に戻した。


いつの間にか目の前に来ていた彼が陰を作っていて、思わずひゃと声が出る。


「だーれが変態だ」


上から見下ろしてくるアーサー先輩は悪そうな顔をしていて。
あ、こりゃやばいなと思うと同時に、窓の光が遮られる。

うまぁ、なんて押し付けられた胸の所為で変な声が漏れる。恥ずかしさで顔に熱があがっていくのがわかった。
ぎゅうぎゅうと包まれた腕が心地良くて、それと日向に居た先輩の体が暖かいのも相まりうっとりする。


「疲れた顔しやがって」


それはどっちの台詞だと言い切る前に、私の意識がはがれていって。
ああ、こうやって抱きつくのも久々なのにと思ったが、欲求には逆らえなかった。
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