急がば回れ。…回りたくない時もある。

□僕らの屋上に誓う
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二人で廊下を歩く。
いつも見慣れた廊下はまったく違う物に見える。

繋いだ手に入れた力を緩める気はない。
もしかしたら変な汗をかいてるかもしれないが、それはもうご愛嬌で許して貰うしかないだろう。
何も言われてないから、きっと大丈夫。


「どこに行くんですか?」

「行きゃわかる」


さっきからそれの一点張り。
この先には階段があるだけだから、上がるか下がるかしかないのはわかってる。


先輩が何を考え何をするつもりなのかとんと考えが至らない。
行けばわかるんだと言うのだからきっと心配はいらないのだろうけど。

学校の中に人はいなくて、時間も結構遅くなってるのがわかる。
携帯で時計を見ようかとも思ったが、画面の明かりが怖くてなかなか見る気にならない。

アーサー先輩も気にしていないみたいだから、きっと気にしなくていいんだろう。


「アーサー先輩」

「なんだ?」

「さっきはなんで起こさなかったんですか?」


階段を登りながら何気なく話しかける。踊場を回って更に上へ。
アーサー先輩は私の一段下を支える様に歩きながら、あーと声を出した。

あ、これは何か都合が悪いんだな。
なんて見抜いちゃったぐらいにして。


更に上の階へあがろうとしている先輩に違う話題を振る。


「屋上への階段って噂がありますよね」

「なんだそりゃ」

「夜になると段数が変わるってやつ」


そこまで言えば、先輩は呆れたのかバカにしているのか鼻で笑った。
興味が無いのか、んなわけねぇだろと淡泊に返される。そりゃ、私だって信じていない。

むっとした私に気付いたのか、アーサー先輩がまた口を開く。


「じゃあ数えてみるか」


へ、と聞き返す前に屋上への階段一歩目が始まった。

いーち。アーサー先輩の声が階段に響く。
ゆっくり上る先輩に併せて、にーと続けてみた。


これで一つ増えてたらどうしよう。思わず固唾を飲み込んだ。


「さん」

「しー」


一つあがる度に恐怖が生まれてくる様な気がする。そう言わなくても、私結構恐がりなのに。
数字がゆっくり増えていく。足も進んでいく。

あ、ちょっと待ってよ。なんて言える空気じゃなく。

最後である筈の段数に今足が乗ろうとしていた。


「にじゅうろ」

「わっ」


ひぃぎゃあああああ。私の喉と階段の空気がびりびりと震えた。
心臓が太鼓をたたき始めたようにばくばく言っていて、涙が滲むのがわかる。

アーサー先輩の手を力いっぱい握りしめた所で、今のが先輩の仕業であることに気がついた。
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