急がば回れ。…回りたくない時もある。

□師走を駆け
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きらりきらり。太陽の光を反射する雪。

裸になった木に無造作に巻き付けられたイルミネーションは、昼間だとちょっぴり色あせて見える。
空は曇ってばっかで、偶に晴れたと思えば雪を溶かしてすぐ隠れてしまったり。
そんな日本の冬。


もうすぐ年も変わる。今年の流行語大賞も漢字も決まって、世間はすっかり年末モード。
師走と名を打つだけあって誰も彼もが忙しない。


私はそんな年末が好きだ。

やる事がまだ残ってるようなやりきったような、そんな空気が漂う冬の冷たさが好きだ。


「今日は天気が良いですね」


そして最愛の恋人である菊さんと二人で散歩しているこの時間が、一番好き。

寄り添うように隣を歩く菊さんに笑いかける。
彼の艶やかな黒髪がさらりと揺れ、時折北風に弄ばれていた。


日課になった一日一回の散歩は私が今何より大切にしている時間である。
そして彼は、私が誰より大切に思っている人だ。


「木の葉はすっかり寂しくなりましたが、イルミネーションもきっと綺麗でしょうね」

「夜も来てみる?」


そうしましょうか。そう微笑んだ菊さんの手に自分のそれが包まれる。
暖かい手のひらに冷えていた手が温まって、ついでに心も暖まった。

ずっとこの時間が続けば良いのに。
道の端にお情け程度に残った雪を見ながら、私たちは公園の奥へと進む。


「もうクリスマスだね」

「今年もあっという間に終わってしまいます」


最後に思い切り羽目を外しましょうね。なんて言った菊さんが、先日ちょっと高いお酒を買ったのを知っている。
今夜が楽しみだねと相づちを打って、絡めた指に力を入れた。


そんな私たちを、コートを着込んだ子供たちが駆けていく。
微笑ましいなぁとその背中を見送って、菊さんの横顔に目を向けた。

彼もまた柔らかく目を細めていて、あまりの整った見た目に目が奪われる。


「ああ、プレゼントに欲しい物はありましたか?」

「あら、まだプレゼント貰えるの?」


子供じゃないよとくすくす笑うと、その顔が不機嫌そうに変わった。
どうやらなにか損ねてしまったらしくて、繋いだ手を責めるように握られる。籠もる圧迫感。

どういうことかなと首を傾げると、今度はため息を吐き出されてしまった。
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