急がば回れ。…回りたくない時もある。

□折紙の婚約指輪
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雪でデコレーションされた幼稚園。たくさんの元気な園児たちが通う幼稚園も、明日からついに冬休みです。

と言っても私自身の冬休みまではまだまだで、このクリスマスもお仕事してます。
恋人が居れば弱音を吐く理由にもなるはずですが、生憎私にはそんな人が居るわけもなく。


もうすぐクリスマスだとはしゃぐ子どもたちが羨ましくてしようがありません。


「春海ー!」


ため息を吐きそうになっていた私に、によによと満面の笑みで走ってきたのはギルベルト君。
銀髪の後ろ側を寝癖で跳ねさせたまま、どうやら何かを両手の中に入れてる様でした。


目線を合わせるようにしゃがみ、ギルベルト君の言葉を待ちます。
彼はえっと、あの、と元気満々に来たわりに小さな声で恥ずかしがっていました。

おトイレかなと思いましたが、どうやら違うみたい。


ちなみに、彼は私の事を先生と呼んでくれません。
尊敬されていないのでしょうか。他の先生にはちゃんと出来るので、副園長先生からはちくちくそう言われます。
そりゃあもうその言葉はちくちくどころかぐさぐさ私の胸に刺さるのです。


もう年中さんになるのに、私の事を先生と呼んでくれないのは複雑な心持ち。
親しみを込めているのだと言ってしまえば前向きですが。

それがもう一人居るから、さらに困りもの。


「春海!」


ギルベルト君が喋らないうちに、また誰かに呼びかけられました。
首を回して声の持ち主を探します。

金髪と表すには勿体無い様な綺麗な髪を揺らしてきたのは、渦中のアーサー君でした。
彼もなかなか手ごわく、なかなか私を先生と呼んでくれません。


そんな二人が揃って私の前に来たものだから、春海先生でしょと言い聞かせます。
お母さんがお母さんの様に私も先生なのよと付け足すと、首を傾げられてしまいました。


今のようにいろいろ言ってみましたが、どう説明すれば理解してくれるかはわかりません。
その子その子に合わせた言葉を選ぶのが正しいやり方ですが、どんな言葉を使っても反応はいまいち。

もしやわざとわかってないフリをしているんじゃないかと、悔しさ紛れに疑ってみたりもします。

アーサー君とギルベルト君は顔を見合わせてから、お互いはっと表情を変えます。
あ、これはどっちが先かの争いになるなと思った矢先に、アーサー君がふいと顔をそらしました。
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