急がば回れ。…回りたくない時もある。

□折紙の婚約指輪
3ページ/5ページ



俺もこれやる。そう言って突き出すように渡されたそれも、やっぱり折り紙で作られたなにか。

アーサー君のちっちゃな手には大きく見えましたが、それは私の手のひらにちょうど収まるくらいのお花でした。


じっと見つめれば、アーサー君がバラだと顔をそらしながら言います。
言われてから見直せば、赤い折り紙のそれは確かにバラのお花に見えました。

小さな花びらが重なった細かいところもよく表現されています。ぴよちゃんに負けず劣らず可愛らしい折り紙です。


「これ、どうしたの?」

「おれが作った」


わぁ。器用だ器用だと思ってはいましたが、こんなモノまで作れるとは思いもしませんでした。
いつもぬいぐるみや折り紙を丁寧に扱って、将来はもしや乙メンってやつになると思っていましたが。

きっと彼より更に器用だと聞く彼のお兄ちゃんにでも教えてもらったのでしょう。

それを言えばギルベルト君も一緒です。
幼稚園で懸命に折る二人。小さな手で眉根を寄せながら、口にまで力を入れて。そんなことを想像して思わず笑ってしまいます。


「これ先生にくれるの?」

「い、いらないならやらねえぞ!」


あわわ。伸ばされた小さな腕から逃げるように手を挙げます。
二人してプレゼントなんて、いったいどうしたのでしょう。


手の中にある折り紙を見つめて思わず笑みを零します。
左手のぴよちゃん。右手の赤いバラ。

尊敬されているかどうかはともかく、好かれて居るようではありました。
自信につながったような気がします。


透き間が空いていた心が、子供たちの暖かいプレゼントで埋まって。
それはまるで窓の外に雪がつもっていくようでした。


「でよ!」


一人勝手ににやにやしていたら、ギルベルト君が私の肘をつつきます。

すっかり気を抜いていて驚いてから、どうしたのかと彼の顔をのぞきこみました。
話を聞りだした彼はほっぺたを真っ赤にして、なにか言葉を口の中でもごもごさせているようでした。


さっきと同じようにじっと待っていると、バラを持つ方の手をアーサー君に掴まれました。
二人そろって、プレゼント以外にまだ言いたい事があるようです。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ