急がば回れ。…回りたくない時もある。
□ばばろあがーる
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じゃじゃん。鞄に隠していた紙袋をマシューの前に出す。
彼の顔より大きな袋をにこにこした顔で受け取ったマシュー。細いリボンを丁寧に解いて、そっと中をのぞき込んだ。
私が包みに入れたのは三ヶ月前からこつこつ編んだ毛糸のブランケット。
マシューのベージュに近い髪に併せて選んだアルパカ混じりのウールは彼の手の中で柔らかそうにもこもこしている。
「すごい……!」
「でしょ?」
自慢するように胸を張ると、マシューは何度も頷いた。その顔はさっきのことなんかすっかり忘れたように弛められている。
そんな彼が可愛らしくて抱きつこうとした。ほんとマシューは私の天使。
が、しかし。
「僕からもあるんだ」
「……おふ」
広げた両手をゆっくり戻してそれを受け取った。
マシューの目の色によく似た空色の包み紙。ほっぺた色した桃色のリボンが巻かれていて、熊ちゃんのシールまで貼ってある。
大きさは、とても小さい。
なんだこれ。口に出さずに首を傾げれば、私より先にマシューがあのねと口を開いた。
「開けてみて」
言われるままにリボンの端を持って引いていく。するするとされるがままにほどけていって、やがてリボン結びだったそれは一本の紐になる。
袋の中身の前にマシューの顔を伺うといつもとはうって変わった力の入った表情をしていた。
マシューが緊張していると、私でドキドキしてしまう。
彼もお茶目に悪戯でも仕掛けたのだろうか。ごくり生唾を飲んだのは、私かマシューかどっちだろう。
「うわぁ…!」
手のひらにちょこんと乗ったのは布で縫われた小さなポーチ。ポケットティッシュより小さいそれはリップクリームが入るかどうかの大きさだった。
フェルトで作られた白いお花がとっても可愛らしいが、何に使うか思い付かない。
でも、凄く嬉しい。
私を遥かに凌ぐ女子力に目から雨が降りそうだが、心が出来立てホットケーキの様に暖かい。
「ありがとう!」
マシューがなにか私の為に作ってくれたということが嬉しくて、思わず力一杯柔らかなマシューの体に抱き着いた。
がたりと椅子から私たちが落ちる。
「あいたっ」
「だからだめって言ったのに」
いや、多分言ってない。