急がば回れ。…回りたくない時もある。

□来世への誓い
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こんにちは。もう数十回目のお手紙になりますね。
私の気まぐれに付き合ってくれる貴方には感謝の言葉しか出ません。

毎度楽しい話に頬を緩ませながら拝読しております。
貴方が書く達筆な文字で読むお話は私の心に染み渡るように入ってくるのです。何度となるお話も、何回目になるのでしょうか。

愉快なお友達の話。可愛らしい弟さんの話。一寸乱暴な喧嘩の話。貴方が一番泣いた日の話。
ああ、先日の海外旅行でお会いしたという本田さんのお話もやはり素敵でした。


そうやって言うと貴方はきっといつものように今日のは何回目だぞと教えてくれるのでしょう。
前の手紙もちゃんと取ってありますし、偶に読み返したりもしますから、自分で確認しろよとも仰ることができますでしょうに。

そうそう、初めて言いますが、私は一度だけ貴方を見たことがあります。
窓から見た遠目でしたが、綺麗な金髪が太陽に輝いていましたね。


金髪と言えば私の知り合いに一人、貴方の様に綺麗な金髪をした幼なじみが居ます。


彼は確かに貴方の様に金髪ですが、きっと手紙なんて書けないでしょう。
貴方は会ったこともないでしょうが、とても不器用な人なのです。私が幼い頃から一緒に居ました。よく、刺繍や編み物を教えてくれました。
ああ、立派な男の人ですよ。ただ少し乙女の様な趣味があるのです。


こんなことを言ってから似てると言うと、貴方は心外だと返事をするかもしれませんが。
私がこうなってから、一度も会ったことがありません。忙しいのか、薄情なのか笑いながら考えています。

寂しくないと言えば嘘になりますが。彼は彼で特別忙しい人ですから早めに割り切ろうと思っております。


あと一つ。お返事を毎回看護婦さんに渡して下さるのはありがたいのですが、そろそろ貴方の容姿を口止めするのは止しても良いのではないでしょうか?
いつもにやけながら手紙を持ってくる看護婦さんを見るところ、とっても素敵な方なのでしょう。

……お会いして直接言葉を交わしたいと思ってはおりますが、そうしてしまうとこの手紙の価値が薄れてしまう様な気がしてしまいます。
なので、今日も貴方がどんな方なのかに思いを巡らせながら眠りにつこうと思います。


また明日、お手紙楽しみにお待ちしておりますね。


三〇二号室より
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