短編

□貴方は私のモノだから、
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塩もみした胡瓜をよく絞ったそれと、潰れたゆで卵。
ボウルの中ではぐしゃぐしゃに混じった白と黄色の中で緑が主張していた。佐助君の目も緑だと思うと、それだけで心が幸せで満たされる。
当然、佐助君の目の方が数万倍も綺麗だけど。

麺棒から一旦手を離し、お鍋の前に立つ。
さいばしを持ち、湯の中のじゃがいもに突き立てた。するりとささるそれ。


茹で上がっている事を確認すると、火を止め鍋を持ち上げる。バコンバコンと変な音をたてながらお湯を捨てた。
じゃがいもが転がっていかない様気を付けながら、ある程度水を切る。

またコンロの上に乗せ火を付けた。
私のすぐ近くでは、佐助君がじっとそれを見ている。いいなぁ、佐助君に見てもらえるなんて。


蒸発していく水をみながら鍋を揺らし、ただの茹でたじゃがいもから粉ふき芋にした。ボウルに入れ、また麺棒を持つ。


ごすりとぶつかる音がして、一個目のじゃがいもが潰れた。
何度も何度も同じ様に繰り返して、全部全部ごちゃ混ぜにする。

胡瓜の緑がじゃがいもに紛れて見え隠れするようになった。
麺棒でじゃがいもを叩き潰すのは、嫌いじゃない。じゃがいももゆで卵も大嫌いだけど、佐助君が好きだから嫌いじゃない。


「早苗ちゃん、楽しそう」

「佐助君の為だから」


自分でもわかるぐらいに頬がゆるむ。
佐助君の為に頑張るのって、とても楽しい。

いつもの事でもあるけど、佐助君の事だけを考えていられる。
それに、私が頑張った分だけ佐助君が喜ぶのだから。

私にとってこれ以上に楽しいことは無い。


佐助君が好きだ。
どうしようもないくらい大好き。

だから私は佐助君に出来ることすべてしてあげたい。
一緒に居るのも手を繋ぐのもキスするのもセックスするのもハグするのも叩くのも噛み付くのも料理をつくるのもすべて私が出来ること。

それが、私の愛全部。


「ポテトサラダ作ってる早苗ちゃんが一番楽しそう」


佐助君はふわりと綺麗に笑って私の頭を撫でる。私はその手にとろけそうになって、うっかり手を止めてしまう。

慌てて麺棒を握り直し、料理を再開する。
じゃがいもは熱いうちに潰さなきゃいけないのだ。ごすりと小さくなった欠片を潰す。


全部ぐしゃぐしゃになればいい。私の佐助君に向ける愛情もこの中に混じってまみれて溶け合って解けて滅茶苦茶になればいいんだ。
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