短編

□鉢巻きになりたくて
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最近、よくわからないが女子が俺に付いて来るようになった。
佐助が言うには付いて来るというより付きまとうの方が正しいとか。俺はストーカーだと思っている。

参ったとは思わない。ただ面倒事が増えたと思うだけだ。
彼女は朝練にも部活動にも着いてきている様で、今日も欠伸をかみ殺していた。そうなるなら止めれば良い物を。


ため息の元である彼女は今日も相変わらずにへにへと笑っている。時折欠伸をする姿はアホ面だ。


「Hey早苗!」

「政宗おはよー」


しかも驚くことに、彼女はあの伊達政宗殿の従姉妹だと言う。姿は全く似ていないが、強引な所はよく似ている。
佐助から聞いた話だが、政宗殿と同じく異性からの人気が高いなどと……破廉恥である。


なにはともあれ、政宗殿が話し掛けたら俺にまとわりつく事もないだろう。気が楽になり自席についた。
前に座る長宗我部殿に挨拶をして、今日の分である教科書を机に入れる。

後ろからは政宗殿と話す彼女の笑い声が聞こえた。振り向こうか悩んで止める。
なにを寂しいと思っておるのだ幸村。精進せよ。


振り向かないうちに鐘が鳴る。慌てて教室を出て行く彼女の声を最後に政宗殿との会話は聞こえなくなった。


「真田、随分好かれてるみてぇだな」

「貴殿とは関係ない事でござる」


俺の後ろに座る政宗殿はやけににやつきながら話しかけてくる。やはり、彼女とは似ていない。

鐘が鳴り、ホームルームも終わる。一限はなんだったかと確認したら、やはり政宗殿が俺の肩を叩いた。
従姉妹の事だからか、政宗殿は彼女の話になるとしつこい。


へいるっくいっとと俺が苦手とする南蛮語で彼が言う。指をさして何かを見ているから、何か見ろと仰っておるのだろう。


「今日は一限目から体育みてーだな」

「何見て……」


思わずため息が出た。ここ最近条件反射となりつつある。
それがわかっていて政宗殿はそう言うことをするから人が悪い。

彼が指す先には、ため息の原因の彼女が居た。


「フラフラしてるな」

「そうでござるか?」


そう聞き終わる前に、グラウンドに出た彼女が転ぶ。受け身も取らずに、頭から倒れ込んだ。
何をしているのかさっぱりわからない。女子はか弱いと思うが、そこまでとは思いも寄らなかった。

後ろで政宗殿のあーあと落胆するような声が聞こえる。
窓の外にいる彼女はすぐ立ち上がり、周りに集まったクラスメイトに笑いかけていた。全然平気そうだと思った矢先、彼女はふらりとよろけるように倒れ込んだ。

今度は起き上がる様子はない。
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