能ある鷹は愛する獲物の為に爪を斬る

□シャングリラでの紅茶タイム
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なんだここ。

夢なのか、夢っぽいけど違うのか。
というかあたしはどこにいるのか。


答えは誰も知らない。
一応ここがどう呼ぶべき場所かはわかる。


差し込む夕日。
並べられた数十個の机といす。

前には黒板。
後ろには棚。


ここは懐かしい教室だった。


それも、解放感があって早く帰りたいと思えども、何故か帰らず誰かと話したい。
そんな時間帯の一番記憶に残る教室。


「どういうことだ」

「知らぬ」


ひょお! と喉と言うより思わず腹から悲鳴が発せられた。
1人だと思ってた教室には、もう1人の女性が居たのだ。

ついさっき360°見回して教室を確認した筈なのに、思わぬサプライズに心臓がバクバクと音をたてた。


うさぎのそれ並みの早さで動く心臓に、冷や汗を滲ませながらすぐ隣にいた女性を見る。
目を惹く長身にさらさらとした髪。触れば絡まることなく鋤けそうで。
今は少し細められた大きな目も見つめられれば誰でもときめくだろう魅力的。

そうとうな美人だった。


「ふむ、なかなか経験した事のない出来事だな」

「え、あたしまだなにが起こってるのかも理解してないんだけど」


美人さんは眉間に少しのしわを寄せながら紙切れを睨んでいた。
なにが書いてあるか気になり同じようにあたしも紙を睨む。

そして自分でも納得していないような表情で今度はあたしを見て口を開いた。


「どうやらここは私やお前・・・・・・えと」


真琴です。とあたしを指差した美人さんに言う。
良い名前じゃないか、と話が脱線して彼女がにっ、と笑った。

あ、笑うと幼い。


「私と真琴がいた世界とは違う世界だと書かれている」

「なんだそれ」


トリップか。トリップなのか。
まったく、番外編と言ったらトリップって安直過ぎるだろ。・・・・・・いや、深い意味はない。

ともかく彼女は何者だろうか。


「お嬢さん、名前は?」

「ラスティーだ。よろしく頼むな真琴」

「ラスティーさん・・・・・・」


どうやら外人さんだったらしい。

なかなかカオスな夢を見るもんだなあたし。
普段考えてる事がわからないからこうなるんだろうか。


ともかくラスティーさんはその手紙を裏返したり光に透かしてみたりしてじっと凝視していたが、更なる発見には至らなかったようだった。
・・・・・・そう言えばその紙はどこから持って来たんだろう。


「ちなみにその紙はどこに?」

「真琴の背中にあったぞ」

「いじめのやり方だ!」


良かったそのまま教室から出なくて!
やたら恥ずかしい奴になる所だった。

と言うかいつの間に貼られていたんだろう。


あたしはここへ来て間もないし。
ラスティーさんがそんな意味のない嘘をついたようにも思えない。
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