犬も歩けば棒に当たる。…私は何に当たる?

□気付けば誰よりも好きでした
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「・・・・・・誰?」


いきなり後ろから現れた長髪の男の人が、にっこりと笑いながら私の肩を抱いてきた。
トニーたちの反応を見る限り彼らの友達であることは理解できる。

だが隣にいる男子の顔には見覚えは無い。


「あれ、お兄さん君に話し掛けた事無かったっけ?」

「無いですね」

「うっそ! お兄さん大失態だよ。君みたいな可愛い子に声掛けて無かったなんて!」


随分甘い言葉が口から出てくる人だな・・・・・・誑しかこいつ。
つくづくついてないなぁ、こういう女の子を泣かしそうな奴は苦手だ。

こういう人にキャーキャー言ってる人の考えがわからない。


「ええやん春海! フランシス格好ええし、描き易いんとちゃう?」

「うーん・・・・・・この人が良いなら」

「もちろん! 女の子が困ってるなら、助けてるのがお兄さんの仕事さ」


背に腹は変えられない。という奴だろうか。
普段はあまり関わりを持ちたくは無いタイプだが、この人の他にやってくれる人を探すのはまた骨が折れる。

もしかしたら話してみれば面白い人かもしれないし、という考えで私は頷いた。





「春海ちゃんってトニーと付き合ってるの?」

「違う」

「彼氏いるの?」

「・・・・・・いない」

「じゃあ俺と付き合わない?」

「っ、だが断る」

「冷たいなぁ。でもそんなところも可愛いよね」


やっぱり断ればよかった。


昨日から描き始めようと思ってたのだが、あの後すぐに部活動の時間が終わり、結局描けず。
今日放課後に私の教室に残ってもらい、描くことになったのだが。


何こいつ超ウザイ。


描いてる間にずっと話し掛けてくる。
それも間違いなく遊ばれてるとわかる内容で。

残念ながら男慣れしてない私はその言葉一つ一つに律儀に反応してしまう。
畜生絶対遊ばれてる!

さっさと書き上げてしまおうと手を急がせるが、苦手な人物画。
どうしても早く書くことは出来なくて。

1日3時間たっぷり使って早く終わっても、出来上がるのに3日はかかるだろう。
遅ければ5日かかるかも・・・・・・あまり使いたく無い手だけど、写真を撮って家でも描いてこよう。


その後もずっと話しかけられたけど、いちいち反応してるのも癪に障って無視することに決めた。
最後にもっと悔しかったが家で続きを描く為に写真を撮った。

かなり悔しかったが。(2回目)
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